ひびの |
あ、すごいすごい。
きれいに出ましたね。
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─── |
大丈夫、でしょうか。
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ひびの |
こんなのちょっと見たことない。
ありがとうございます、うれしいです。
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─── |
よかった‥‥ホッとしました。
ホッとしたところで、
すこしお話をうかがいたいのですが、
よろしいでしょうか。
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ひびの |
もちろんです。
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─── |
ひびのさんは、
いままでに扇子をつくったことは?
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ひびの |
今回のように
素材からぜんぶチョイスしてつくった扇子は、
これがはじめてですね。
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─── |
そうですか。
あの‥‥最初にわたしたちが
「扇子をつくってください」
とお願いしたとき‥‥。
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ひびの |
そうそう(笑)、
ちょっとピンときてなかったんですよ。
扇子を持ちたい気持ちが自分になかったんです。
かっこいいことのような気がしてなくて。
ちょっとこう、おじさま系というか。
でもそれが、
この夏がきてから、
扇子がいかに便利かを実感して
持ち歩くようになったんです。
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─── |
へええー。
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ひびの |
たまたま、
いただいた扇子が気持ちよかったんですよ。
暑いと、顔に汗をかくじゃないですか。
そういうときにちょっとあおぐだけで、
すっごくすずしいんですね。
風が顔にあたるだけで、
ぜんぜん気持ちが変わりますよね。
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─── |
はい、変わります。
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ひびの |
それをたたんで持ち歩けるっていうのは、
やっぱりいいと思ったんです。
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─── |
よかったです、
まずは扇子にピンときていただけて。
そしてデザイン、となるわけですが、
この柄にしようと思ったのは‥‥?
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ひびの |
まずはなんとなく、
植物をやりたいと思いました。
白檀の香りとか、すてきじゃないですか。
サッと振ったときに、
植物から涼やかなものが発散されるような、
そういう雰囲気がいいな、と。
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─── |
なるほど。
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ひびの |
あとは、この原画のタッチでやりたかった
というのがあります。
ボールペンで原画を描いたんですけど、
これが、ぐじゅぐじゅっと、
じゃじゃじゃっとした、粗くて細い線なんです。
この線が再現できると聞いて、
ほんとうならそれをやりたい、と。
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ひびの |
ハンカチをいっぱいつくっているので、
布にプリントするときの限界を知ってるんです。
これだけこまかい線は、
なかなか普段できないのでぜひやってみたくて。
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─── |
イメージ通りにできましたでしょうか。
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ひびの |
それは、
そうでもなかったですよね(笑)。
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─── |
‥‥はい(笑)、
そうだったかもしれません。
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ひびの |
最初は白だけでつくろうと思ってたんです。
そしたら見本をみたら
銀がおもしろかったので
色を変えてみよう、となりました。
たまたま出てきた
裏面の粗さがおもしろかったので
もっと密度を粗くしてください、とか。
途中、途中で発見があって、
想像していたことを裏切ってくれる。
そのたびにいいことが起きるんです。
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─── |
どんどん変更していかれましたよね。
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ひびの |
まさかこんなにもきれいに‥‥。
糸で塗ったみたいな、
刺しゅうのように見えるのも、おもしろいなぁ。
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─── |
きれいですよねぇ。
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ひびの |
すみません、ほんと、
時間がないってうかがっていたのに、
こういうのをお願いしちゃって。
でも、すごくうれしいです。
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─── |
もう、そう言っていただけるだけで‥‥。
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ひびの |
こんなにたのしいお仕事に
誘っていただけてありがとうございました。
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─── |
そんな、こちらこそです!
こちらこそ、ありがとうございました。
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ひびの |
これ、はやく持ち歩きたいです。 |