故人・井上有一の書による扇子、
「雨ニモマケズ」については、
糸井重里の話を掲載させていただくことにしました。
※井上有一という書家についてや、
糸井がこの人物に魅了された経緯などは、
こちらに詳しく記されています。
「扇子をつくるという話を聞いてすぐに、
『雨ニモマケズ』の扇子がほしいと思いました。
うちの会社に飾ってある、
井上有一の『雨ニモマケズ』。
いつかこれで何かをつくりたいと、
もう、ぼくは、ずーっと、強く思ってたんです。
ですからこのたびそれが実現して、
こんなによろこばしいことはありません」
「むかしのことです。
井上有一さんを知らなかったぼくに、
テレビの番組から、
井上さんのインタビューに行きませんか?
という話がやってきました。
いまも続いてる『NHK 日曜美術館』から。
それで、まあ、
よく知らないけど行ってみようか、
くらいの気持ちで行ってみたら‥‥
すっかりぼくは、夢中になってしまった。
井上さんという人もすばらしいんだけど、
とにかくその、書が、作品が、すごい。
書っていうのは、いいもんだなあって
こころから思って、
それから井上さんの展覧会のタイトルをつけたり、
『貧』という字でパルコの広告をやったり、
いくつかのことを一緒にやりました。
井上さんが生きていたら、
もっといろいろやりたかった。
ほんと‥‥好きなんです。
この人の書が」
「雨ニモマケズという言葉から、
ことしの震災を連想する人も多いと思います。
でも、これは偶然のことです。
震災を想う気持ちがないことはない、
ないことはないけれど‥‥
雨ニモマケズの詩は、
むかしから、いつでも、読むたびに、
ああーと思わせてくれる不変のものだから。
なんかこう、あれです、
人間の、ここの部分のような‥‥。
要(かなめ)。
扇子の骨をとじ合わせる小さな釘。
この扇子は、こんな気持ちです。
小さな、要の気持ち」
「雨ニモマケズは作品じゃなくて、
宮沢賢治の手帳に書かれていたことばです。
ぼくはその復刻版、
「雨ニモマケズ・・・」複製手帳というのを
持っています。
それはたしか通信販売で買えると思うので、
いっしょに案内をしておいてください。
それと『宮沢賢治記念館』も。
「まあ、なにしろほんとにね、
かっこいい扇子ができました。
うれしいよ、これは。
いますぐ持って帰りたいくらいです」 |