- 野村
- 人間も、いきものの一部です。
人間をとりまく事象について、
何らかの究明をしようというのであれば、
やっぱりプリミティブな生物世界を
知っていなきゃだめだと思います。
例えば男ってね、
道具にすげえこだわるでしょ?
たとえば、いまお持ちの、取材用カメラ。
いいカメラだよね? - ほぼ日
- 会社のカメラです。よく写ります。
- 野村
- 男はカメラをよく買い換えます。
僕もよく言われるんですよ、
「あんた、何台カメラ買うの?」 - ほぼ日
- 「カメラ屋さん、やる気かい?」って。
- 野村
- それから、レンズもね。
「なんでこんなにいっぱい
レンズを持ってないといけないの?
よその家もこんななの?」
と言われます。 - ほぼ日
- 車もそうですし、男性は道具が好きですね。
コレクションがどんどんたまります。 - 野村
- 人間はもちろん、チンパンジーも、
鳥でもそうなんだけど、
高等な生物のオスは、わりと
素手で仕事をしないんです。
道具を使って仕事をするんです。
- ほぼ日
- へええ!
- 野村
-
ある種の鳥は、サボテンのとげを
「さあ、どれにしようかな。これ、いいかな?」
と、選びます。
それをくわえて森に飛んでいって、
自分の選んだ「マイとげ」を使って
木から虫をほじくり出します。
チンパンジーは、アリ塚の中に草のクキを入れて、
それにかみついてきたシロアリを引っぱり上げて、
なめて食べます。
ピグミーチンパンジーも
棒を使ってエサを採ったりします。卵を抱いている自分の連れ合いが
虫を取りにいけない、
食べ盛りのヒナが
ひし形の口を開けてないている。
道具を使って能率を上げることで、
オスはメスとコドモを養っていけるんです。
一生懸命なの。高等生物のオスは、
道具にこだわることで、生きていける。
人間の男が道具を好きな理由は、そこなんです。例えば原始時代、
シカをしとめに行こうってときに
木の棒を持っているヤツと
石を持っているヤツがいたとしましょう。
木の棒は長いし、石は強力です。
さあ、自分はどうします? - ほぼ日
- 長くて強いもの‥‥木と石‥‥。
- 野村
- そう。そこでいちばんかしこい男は
石斧を作ります。 - ほぼ日
- なるほど。それが自分と家族の
生死にかかわることだから、
道具が好きなんですね。
そう思うと、男性が道具を増やしても
イラついたりしないですみますね。 - 野村
- あんまりイラつかないであげてほしいけど‥‥
そう言えば、ライオンのオスは、
イラついたメスや娘にぶっ叩かれても
大丈夫なように、たてがみすごいんですよ。 - ほぼ日
- あのたてがみは、メスのイラつきから
身を守るためなんですか? - 野村
- 傷を防ぐためですね。
王者たるもの、ハーレムの女どもに
ひっぱたかれてもびくともしないように。
そのための盾です。
メスはやっぱりメスなんだよね、
手加減なしですよ。
- ほぼ日
- メスはなぜオスを叩くんでしょうか。
- 野村
-
そりゃあ、オスが怒らないからですよ。
「男は女や子どもを怪我させちゃいけない」
という、いきものの法則があるんです。
動物だけじゃなくて、人間も全部そう。ですから、オス犬はメス犬のことを
絶対にかみません。
女性は気がついてないかもしれないけど、
男はすごく手加減してるんです。
ベッドの上にいるときでさえ手加減します。
オスが本気になると怪我をさせちゃうから。男の力はものすごいんですよ。
だから、男はいつだって
思いやりをもたなくちゃいけない。
いきものの真理から大きく外れることを
しないために。 - ほぼ日
- しかし、やってしまっていることも‥‥
- 野村
- もしもそんな人間がいるんだったら、
農作物の肥やしになったほうがいいと思います。
オスとメスがお互いを助け合って
基本的な役割を果たそうとしないのであれば
ミミズやデンデンムシみたいに
雌雄同体でもいいし、
バイキンみたいに細胞分裂で増えればいい。
そういう生物になればいいんです。
高等生物になればなるほど、
環境の変化に追従できるように、
遺伝子を取りかえっこしたり、
けっしてやぶってはいけない
掟のようなものが必要になってくる。
人間もまた、ほかの高等生物と
同じなんですよ。 - ほぼ日
- そのあたりを無視して、
ちょっと悪い意味でも
フラットになっていますね。 - 野村
- もともと、いきものの世界に
平等はありません。
もちろん差別もありません。
でも、区別はしなきゃダメなんです。
そうじゃなきゃ、
「物を離せば落ちる」とか
「太陽が東から昇る」という
あたりまえのことを否定することに
なっちゃいますから。