- ほぼ日
- 我々は無意識で
人間と、ほかのいきものの境を
引いてしまっているかもしれません。 - 野村
- 人間も、ほかのいきものと同じですよ。
哺乳類だともっと近いでしょう。
例えばね‥‥例えば、男の人なら
だれでも経験したことあると思うんだけど、
男のピンチというものがあるんです。 - ほぼ日
- 女のピンチとはちがうんですか?
- 野村
-
女のピンチとはちがうと思う。
男同士の戦いで「消滅させられる」、
生きるか死ぬか、こてんぱんの目にあう
そういうピンチです。
ライオンで言えば、
自分の女たちの群れを
よそ者に乗っ取られるようなことです。新しく王座についたオスライオンは
赤ん坊たちを目の前で食います。
そのとき、メスたちはそれを許します。
「もっと強いタネで子を産みなおそう」と
思うんです。 - ほぼ日
- そうなんですか。
- 野村
- 追っ払われただんなとの子どもを食べられて、
「いい食べっぷりですね」と
うっとりしているかどうかはわかりませんが、
そんな妻たちのようすを、負けた男は
草むらから見るしかありません。
それが男の世界です。 - ほぼ日
- きびしいですね。
- 野村
-
きびしいですよ。
ですから、男にとっては、
会社をクビになったり
カメラを落として壊すよりも、
恋愛で傷ついたことのほうが
本能的な部分まで及びます。彼女を寝取られちゃったら、
急に仕事もうまくいかなくなって
体重も減っちゃった、など、
ものすごく嫌なことが
つづくのではないでしょうか。
別れた彼女が知り合いの男と
ホテルに入るのを見ちゃった、
なんていうのもショックなのでは? - ほぼ日
- 別れたあとでもですか?
- 野村
-
気持ちが悪いと思いますよ。
いまつきあっている彼女が、
モト彼と友達づきあいしていたりしても、
むっちゃくちゃ嫌な気持ちになりませんか?だからこそ、おっかなくて、みんな
彼女の携帯電話を見られないでしょう。
見たらおしまいかもしれませんよ。
人間の生殖形態には
そういうところがあるようです。例えば、男はことが終わったあとに、
女のことをウザくなっちゃいます。
暑いし、もう、
布団から出て釣りに行きたい! - ほぼ日
- 急に別世界に行きたくなるんですね。
- 野村
- そう。終わったあとは、プラモデル作ったり、
山登ったり、絵を描いたりしたいんです、
本当は。
なんでこういうことが起こるか、知ってますか? - ほぼ日
- 人間の生殖形態に関係があるんですか?
- 野村
- いつまでも男にへばりつかれていたら、
女が次の男とできないからです。 - ほぼ日
- 次の男。
- 野村
- 次の男がまたすぐやってくるんですよ。
人間の男の性器には
前の男の精子を掻き出すための部分が
あるんですけど、知りません?
それがあるのとないのでは、
掻き出し率が90%も違うんだって。 - ほぼ日
- ‥‥掻き出すためとは、知らなかったです。
- 野村
- 男はスッキリしてしまうと、
「さあてと、じゃあ家帰って
今日は国木田独歩でも読むかな!」
なんて思いながら、帰るわけです。 - ほぼ日
- 女性がそのままでいると、またやってくる。
- 野村
-
また次の男が、
「お、前のが済んだ、済んだ」と言って
やってきます。
そして、前の精子を掻き出して
自分の精子を入れる。
だから女は、快感曲線の下降がなだらかで
夢うつつな気持ちになる生きものなんです。そんなわけですから、
人間のメスは、オスを裏切りやすいんです。
その結果──まあ、こっちが
原因かもしれないけど、
男はあっちこっちに
ばら撒かなきゃいけないんです。
あ、もちろん強いオスは
自分のメスにちょっかい出すオジャマ虫を
こてんぱんに打ちのめしてもOKです。
こういったオスとしての普通さを
認めなくなったのは、何なのかな?
倫理観? - ほぼ日
- う〜ん、うう〜ん。
- 野村
-
女を得るための戦いに不利な人たちが
「異議あり!」って
はじめちゃったからでしょ?
僕は、本来は
そんなこと言ってちゃいけないと思う。
男たるもの、実力の世界で
女を勝ち取るのが本当で、
人間だけがそうしなかった場合、
未来への存続が確立できなくなります。場合によっては、でかい男同士が戦っている間に
ひ弱なオスがサササッと行って
ゲットしちゃうときもあるかもしれませんね。
だけどその結果、
いろいろなバリエーションの次世代が生まれます。
そうやって人間は発達してきたんです。こういうことに反発する人は、
ドリーミーな世界に住んでいる机上論者と
マスメディアです。
圧倒的多数の意見を肯定していないと
自分の身があやうくなるからでしょう。
でもそんな、なまやさしいことばかりを
言っていたのでは、本来の、
動物の一種としての人間の未来はない。