神様をさがしに。  ~高尾山の巻~  どうか、神様! と、願いをかけるとき‥‥ 我々はいったい どこに呼びかけているのでしょう。 おやしろの中に? それとも、天に向かって? それとも、自分の中の奥の底? * 神様の居場所をさがしに、 おかしな一団が ぷらりと旅に出ることにしました。
『日本の神様』(理論社刊)著者、畑中章宏さん。 おかしな一団のリーダー役。神様が好き。
グラフィックデザイナーの祖父江慎さん。 あちこち寄り道するのが大好き。
イラストレーター。100%ORANGEの 及川賢治さん。虫が好き、ハイキングも好き。
「ほぼ日」乗組員。デコボココンビ。
天狗の山
「神様に、会いにいきたい」
「パワースポットとか、興味あります!」
と、ハイキング気分が盛り上がった我々、
神様をさがす旅の、最初の行き先を
高尾山に決めました。
リーダーのハタナカさんは
「最初の行き先としては、
 ピッタリだと思いますよ」
と言います。
どんなふうにピッタリなのでしょう?
夏の暑さの残った、ある日のお昼すぎ、
京王高尾線の「高尾山口」駅に
集合しました。
では、はじまり、はじまり~。

「たかおさんぐち」と読みます。
ハタナカ みんな集合してますか?
── はい、全員そろってます。
我々、わりと山登り気分いっぱいの
格好をしてきたのですが、
ひとりだけ、タウン派の方が
混じっている気がします。
ソブエ おはようー。

ふだん着。
ハタナカ ソブエさん、革靴?
ソブエ うん。だめだった?
ハタナカ だめじゃないけど。
オイカワ リュックじゃなくて、
手さげかばんですね。
── だいじょうぶかな‥‥。
ソブエ それよりも!
ここ、ゴミ箱がひとつも
見あたりませんよねぇ。
ハタナカ 自分でゴミを持ち帰りましょう、
という考えで、
高尾山は、駅構内からすでに、
ゴミ箱がないんですよ。
オイカワ ‥‥ソブエさん、
見てください、あの看板。

ゴミ箱はひとつもありません。
── じゃあ、みんなでひとつ
ゴミ袋を作って
持って帰りましょう。
ソブエ そうしよう、そうしよう。
オイカワ いきなり豆知識ですね。
全員 高尾山には、ゴミ袋を持って
出かけましょう!


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── ところで、もうひとつ‥‥
駅に天狗が
たくさんいるのが気になります。

さりげなく写真を撮るだけで、
このように天狗とツーショットに。
── なぜ、天狗ですか?
ハタナカ 高尾山は、天狗の山なんです。
きっと、山に天狗がいっぱいいますよ。
ソブエ 天狗にいっぱい会えるのかぁ。
オイカワ 天狗のポスターもあちこちに
貼ってありますね。

高尾山の天狗の写真。
ムム? ちょっとイメージが‥‥?
── 天狗というと、
長い鼻のイメージがありますが、
そんな感じでもないんですね。
ハタナカ はい。天狗には、
長い鼻の大天狗と
カラスのようなくちばしを持つ
カラス天狗がいます。
ちなみに、大天狗はうちわ、
カラス天狗は剣を
たいてい手に持っています。
ソブエ 大天狗とカラス天狗は、
なかよしなの?
ハタナカ えーっと‥‥
どういう意味かなぁ、
そりゃ、なかよしです‥‥
なかよしだと思います。
ケンカすると、
けっこうヤバいと思う。
オイカワ ヤバいんですね。
── 出発前に、あの地図の前で
記念撮影しませんか。
オイカワ ぼくは、写真にうつるのが苦手なので、
ぼくに撮らせてください。

では出発です。撮影:及川賢治
ハタナカ 今日は、時間も遅いし
運動不足の人も多いので、
途中まではリフトで登りましょう。
全員 はい。

リフトの駅をめざして数分歩きます。
晴れてよかったですね。
── 高尾山にあるお寺は
高尾山薬王院というのですね。
ソブエ あ、思い出したよ。
ぼくは昔、たかおという名前の人と
ここに来たことがあるんです。
学生のときです。
山登りの途中で、
「たかおさん」「たかおさん」と言いすぎて
「たかおさん」と呼んでるのか
「高尾山」と言っているのか
自分でわからなくなりました。
── 山に登ってると、
酸素が頭に回らなくなりますからね。
ソブエ そうそう。
オイカワ じゃ、ソブエさんは、
高尾山経験者なんですね。
ソブエ 山の中に何があったのか、
ぜんぜん憶えてないけどねぇ。

たかおさんと高尾山に登ったときの
ソブエさんの思い出を聞きながら。
── あ‥‥あそこに、
石碑がありますよ。

小さな拝殿のようなものも
あります。
ソブエ あれは、何ですか?
ハタナカ あれは、遥拝所(ようはいじょ)です。
はるかにおがむ、と書いて遥拝。
ソブエ おお、むずかしい読み方ですね。
オイカワ 何のための場所なんですか。
ハタナカ 病気などで山に登れない場合などは、
ここでおまいりすると、
山の上に登って参拝したのと同じ
ご利益が受けられますよ、
ということで、作られたおやしろです。
女人禁制の山もありますから、
そういう場所にも、
女の人が麓から拝めるように
遥拝所が設けてある場合もあります。
ソブエ じゃあ、ここでおまいりすれば
登ったのとおんなじことに‥‥。
ハタナカ それで帰る、という手も‥‥。
── いやいやいやいや。
オイカワ いやいやいやいや。
── 我々は登りますよ。
オイカワ でも、おやしろののぼりに
「登山安全」と書いてありますから、
ここでみんなで
拝んでいくのはどうでしょう。
ハタナカ そうしましょう。

ん‥‥千円?
ソブエ お賽銭に千円入れた人が
いるのでしょうか。
オイカワ 千円で、こういう石に
してくれるんでしょうか。

お賽銭に迷う我々。
ハタナカ 昔ですよ、昔。
しかもいま、千円にしろと
いう意味ではありません。
── じゃあ、迷いなく、拝みましょう。
手は何回叩くんですか?

自然とみんな、帽子を取りまして。
ハタナカ ぼくは、2拍手します。
ソブエ では、2拍手。
── 2礼2拍手ですか?
ハタナカ 正式なのは、
2回礼して、2回柏手、そして、1礼。
オイカワ ええっと、
何を思えばいいんでしたっけ。
── ええと、今日の登山のことでしたよね。
全員 パン、パン。

今日の登山が、無事でありますように。
 
(つづく)
ハタナカ
ハタナカメモ
高尾山


「明治の森高尾国定公園」に
指定されている高尾山は、
キャンプやバーベキュー、植物の採取、
鳥類の捕獲も禁止されています。
もともと山全体が修験の道場で、
いまも高尾山薬王院の寺域であるため、
天然の森林が守られているのです。
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