糸井 |
はじめまして、糸井と申します。 |
さそう |
はじめまして、よろしくお願いします。 |
糸井 |
「はじめまして」ということになると、
因縁みたいなところからになるんですが。
まずは『さよなら群青』の1巻を
送っていただいたんです。
ありがたいことで、
そうやって本を送ってくださるかたは
たくさんいらっしゃるんですね。
ですがなにせ、
読んだほうがいいかどうかを調べるだけでも
なかなかたいへんなことになるんですよ。 |
|
さそう |
はい。 |
糸井 |
「読むかもしれない」っていうところに、
どんどん本が溜まっていっちゃうんです。
で、そんな中に『さよなら群青』が‥‥。
すみません。 |
さそう |
いえいえ(笑)。 |
|
糸井 |
さそうさんは『おくりびと』を
描いてらっしゃいますよね。 |
さそう |
ええ、映画を漫画化したものを。 |
糸井 |
それを映画のあとで読んだんですよ。
そのときに
「さそうあきらってひとは、
こういう絵だったかな?」って。
あの、『俺たちに明日はないッス』って、
さそうさんですよね? |
さそう |
はい、そうです。 |
糸井 |
あのころの絵もまた違っていて、
「線がどんどん柔らかくなってるんだ」
みたいなことを『さよなら群青』の
表紙だけを見て、なんとなく思ってたんです。
パラパラッともやらずに。
‥‥ほんと、すみません。 |
さそう |
いや、そんな(笑)。 |
糸井 |
で、きっかけさえ忘れちゃったんですけど、
『さよなら群青』を読んでみたら、
はなっからびっくりしちゃって。
「こういうのを見逃してたのか!」と。 |
さそう |
(笑) |
糸井 |
ドキドキしたんです。
なにを感じているのかもわからずに、
「ああ〜!」って思った。
あとから振り返って確かめたくなるような
自分の感情のようなものがあったんです。
あとになって考えると、
「それは恋のことなのかもしれない」
と思ったり。 |
|
さそう |
そうでしたか。
ありがとうございます。 |
糸井 |
そもそもは新潮社さんから、
2巻の帯の言葉を
ご依頼いただいてたんですよね。 |
編集の
かた |
はい、お願いいたしました。 |
糸井 |
ちゃんと読んでいなかったし、
そのときは時間がとれそうもなかったので
お断りさせていただいたんです。
読まないで安請け合いをしないように
気をつけていると、そうなっちゃって。 |
編集の
かた |
たいへん残念でしたが。 |
糸井 |
で、読み始めたら、
「なんだ、これは!?」ってことになりまして。
贖罪の意識みたいに、翌日の「ほぼ日」に
「これはおもしろかったぁ」っていうのを
書かせていただいたんです。
もう、「すいませんでした」という思いで。 |
|
編集のかた |
それを書いていただいたのが、
帯の締め切りの日だった、と。 |
糸井 |
ああ〜、すみませんねぇ。
いや、こういう言い方もへんなんですが、
正直にやると、
そういうことにもなっちゃうんですよ。 |
さそう |
はい。
でも、うれしかったです。 |
糸井 |
とにかく人に読ませたくなっちゃって、
贖罪みたいなきもちで知り合いに
「読んだ? 読んだほうがいいよ」
とすすめたりしてたんです。
そうこうしているうちに
コミックスの2巻ができて、
今のうちにちゃんと出版が保証される方法は
ないものだろうか、と思いはじめたりしまして。 |
さそう |
なんだか、ご心配いただいて、
ありがとうございます。 |
糸井 |
いや、口幅ったいですけど、
油断できない時代じゃないですか。
だってあの、天才音楽家の話‥‥。 |
編集のかた |
『神童』ですね。 |
糸井 |
そう、『神童』。
『神童』と『マエストロ』と
続けて読んだんですが、
あんのじょう『マエストロ』は、
中断してた時期があったそうで。 |
さそう |
そうですね。
『神童』も途中で打ち切りになりました。 |
糸井 |
はぁ〜! そうでしたか、すごいことですね。
それはショックの度合いって、どうなんですか? |
さそう |
う〜ん‥‥
ある程度、覚悟はあったので。
めちゃくちゃショック
ということでもなかったですね。 |
|
糸井 |
あ、そういうものですか。 |
さそう |
時代とか出版界の状況っていうことよりも、
打ち切りになるのは、
ぼくの問題なのかなと。 |
糸井 |
それは? 遅筆だとかそういうことですか。 |
さそう |
いや、あの、人気がないんです(笑)。 |
|
糸井 |
‥‥え?
いや、そうですか。
ぼくは『神童』にしても
『マエストロ』にしても、
途中で読むのをやめるなんて
できなかったですよ。
ということは、もう、ぼくの目が狂ってる? |
さそう |
いえ、そんな(笑)。
でも、時間が経つと、
だんだんと広がっていっくものもあって。 |
糸井 |
ああー。
長距離ランナーみたいな? |
さそう |
そうなんでしょうか。 |
糸井 |
走り方が違うんですかね? |
さそう |
そうですね。
ぼくの読者っていうのは
多分すごく遠い所にいて、
そこに届くのに時間がかかるんだと思います。 |
編集のかた |
さそう先生は、
遠くにボールを投げるような
作家だと思います。 |
さそう |
あ、そうですね。
川の向こうに投げないと(笑)。 |
糸井 |
なるほどぉ。
いまの部分は完全に自己分析ですね。 |
|
さそう |
ああ‥‥(笑)。 |
糸井 |
自己分析してる(笑)。 |
さそう |
そうでしたね(笑)。
(つづきます) |