<不定期連載>料理研究家・藤井恵さんと考えるおかあさん、ちゃんとごはん食べてる?
<不定期連載>料理研究家・藤井恵さんと考えるおかあさん、ちゃんとごはん食べてる?


藤井恵さんは、テレビや雑誌、書籍、
講演会などでも活躍するお料理の先生です。
「家族の元気は食卓から」をモットーに、
夫と娘、家族4人のふだんの暮らしから
これまで生まれた、健やかでおいしいレシピは数知れず。
その一方で、ここ最近は、もうひとりの大事な家族、
離れて暮らす80歳代のおかあさんの食卓が、
日々、どんどん、おざなりになっていっているようなのが、
とても気にかかっているそうです。
「いつまでも健やかに、たくさん長生きして欲しいから」
よりおいしく、よりバランスよく、
体と心を、健やかに保つ食卓の一助となれば、
と腕まくりをした藤井さんですが…。
笑いあり、時に失敗や、ちょっぴり苦い涙もあり、
トライ&エラーのあれこれを、ご紹介します。

いっしょに考える人 料理研究家 藤井恵さん

藤井恵(ふじい・めぐみ)

料理研究家。
女子栄養大学栄養学部卒業。
大学在学中よりテレビ番組の
料理アシスタントを務める。
大学卒業と同時に22歳で結婚、
25歳で長女、29歳で次女を出産。
5年間専業主婦、子育てに専念し、
30歳でテレビのフードコーディネーターとして復帰。
以来、雑誌や書籍、テレビなどの各種メディア、
講演会などで活躍。
現在、日本テレビの『キューピー3分クッキング』の
レギュラー講師を務める。

藤井恵さんオフィシャルブログ
藤井恵さん公式サイト

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このひと夏、慌ただしく過ごしているうちに、
この連載も、すっかりご無沙汰してしまいました。

実家にもなかなか足を運べず、やきもきしていましたが、
お盆にようやく、家族そろって表敬訪問。

母の調子がよさそうなことは、
兄から聞いてはいたものの、
あらためて久しぶりに顔を合わせてみたら、
びっくりするほどの元気っぷりです。
ほんの1年ほど前は、食も暮らしまわりも、
なにもかもが、おざなりだった母でしたのに、
ゴミの整頓もきれいにできていましたし、
冷蔵庫もちゃんと生鮮食材が入っていて、
どうやら、
『おかあさん、ちゃんとごはん 食べてます!』(笑)

しかも、仏壇をきれいにお掃除して、
盆灯籠を出したり、
ご住職にふるまうお料理を準備したり、
御仏様をお迎えする支度のほとんど全部を、
母ひとりで調えていました。

さて、お盆といえば、我が家では昔から、
おはぎをつくるのが慣例なのですが、
いつのころからか、
まだ幼かった娘や姪っ子、甥っ子たちも加わるようになり、
家族総出、ワイワイとおはぎを丸めて、
仏壇にお供えするのが、
お盆の楽しい恒例行事となっています。

▲ 我が家の『おはぎ』。

▲ あんこは、大きなお鍋でたくさん煮ます!

父が他界してから早36年。
孫たちは、誰も会ったことのないおじいちゃん。
「でも、忘れないであげてね」という思いが
母にはあったのでしょう。
こうして長年にわたって、おはぎづくりを続け、
家族の絆をつむいできてくれたことを、
今あらためて、しみじみとありがたく思います。

そして、みんなで食べるお料理は、わたしが担当。

▲ 納豆、めかぶ、長芋、オクラ、
たくあん、まぐろのネバネバ和え。

▲ 夏野菜のだし浸し。

▲ レバーの赤ワイン生姜煮。

▲ ししとうがらしとじゃこの当座煮。

▲ 茹で豚の韓国風ポッサム。

『ごちそう』と大上段に構えたものではなく、
いつもの我が家の定番メニューです。
そういえば、この中のいくつかは、
母に届けたこともありましたっけ。
でもこの日は、タッパに詰めた
味気ないデリバリーではありません(苦笑)。
家族の顔が揃ったのもうれしかったのか、
母はすべてよく食べてくれました。

また、兄妹が泊まりがけで実家に集まると、
毎度、夜遅くまで飲み明かするのも恒例で、
今回もご多分に漏れず、
3人で盛り上がっていたのですが、
なんとその間に母が、
ふとんを敷いておいてくれました!
「あぁもう、ホントにしょうがないわねぇ」
とでも思ったのでしょうが、これもうれしい親心(笑)。

体力もまた、さらに回復し、
発作が起きることもなく、
折れた前歯もきれいについて、
デイサービスも楽しんでいる様子です。

汁物の吸い口にと、
庭に自生している三つ葉を摘みに行く姿も、
まったく危なげありません。
去年の今ごろのわたしが、
仕事もいったんお休みにすることも視野に入れつつ、
クヨクヨと不安ばかりをつのらせていたのが
まるでウソのようです。

そしてお盆のあと、また娘達と母を訪ね、
この日は、みんなで餃子をつくりました。

▲ この包み方は私風。
具材があぐらをかいている感じ。
次女が包んだものです。

▲ 母は座りながら、のんびり包んでいます。

▲ なんとなく全体に幅広なのは母タイプ。
長女が小さかったころ、
母のお手伝いで身につけた包み方です。

▲ 餃子の包み方は、
家庭ごとに個性が出ますね。

幼いころに、同居していた時期もあり、
母によく面倒を見てもらった娘たち。
特に長女は、おばあちゃんが教えてくれたことを、
いつも素直に取り込んでいるようで、
餃子の包み方も、卵焼きも母仕込みです。

▲ おいしそうに焼けました!

みんなよく食べて、
娘達は久しぶりにお小遣いまでもらい、
大喜びで帰って来ました(笑)。

そして、また後日、今度は家族そろっての温泉旅行。
お昼前くらいに、車で出発予定で、
ランチはお蕎麦でも、と思っていたのですが

なんと母が塩むすびを準備していてくれました!
母のおにぎりを食べるのは、
もしかしたら小学生以来かも…。
ほんのりの塩味、
口の中でほろっとほどける柔らかなおむすびは
たとえようもなく懐かしく、
なんだか胸がじんと熱くなりました。

▲ おむすびを、きれいに畳んでしまっておいた
包装紙で包むのも昔のまま(笑)。

それにしても、
「どうしてそんなに元気になったの?」と
思われる方もいらっしゃるかもしれません。

母の体調の好転というのは、
もちろんあるでしょうが、実際のところ、
笑顔まですっかり明るくなったことについて、
本当はなにがどのように影響したかは、
わたしにも、よくわかりません。
でも、もしかしたら一番大きかったのは、
私自身の気持ちが変わった、
ということなのかも、とも思っています。

実は連載をはじめるときには
想像もしていなかったことですが、
今回、連載を続けていく中で
びっくりするほど多くの
感想メールを頂戴しました。

介護のまっただ中で奮闘されている方、
すでにその役目を終え、その経験をもとに
いろいろなアドバイスをくださった方…。
ひとつひとつ、すべてじっくりと
読ませていただきましたが、
胸に刺さる言葉がたくさんあり、
なんども読み返しては、反省しきり。

これまで、母が老いていくことに対して、
情けなく思うことがあったり、
苛立っていたことは、以前にもお話しましたが、
当時の自分の態度を今ふりかえると、
ほんとにダメダメだったなぁ、と思います。
そんなわたしが、
母のこれまでの人生と今を肯定した上で、
娘として、ちゃんと敬意を払うべき、ということに
気がつくきっかけになったのは、
みなさんからいただいた、たくさんのメールでした。

ふり返ってみれば、まるで子どもを扱うように、
先回りして、できることを取り上げた挙げ句、
なにをどう工夫しても、思い通りにならないことに、
ひとりカリカリ、あたふたしていたわたしに、
それぞれのお立場から、忌憚のないご意見をいただき、
自分の思い違いや、思い込みへの気づきを
与えてくださったことに、あらためて感謝です。
おそらく、わたしが変わることで、
いつの間にか、わたしに対して、
かたくなになってしまった母も、
変わっていったのでしょう。
今こうして母の手料理をまた口にすることが
できようとは、本当に感無量です、

さて、この連載は今回で、
ひとまず中締めとさせていただきますが、
もちろん、大なり小なり、
母のフォローはこれからも続きます。

またなにかの機会に、
ご報告することもあるかもしれませんが、
12回にわたって、お読みくださったみなさん、
本当にありがとうございました。

同じような悩みを抱えて、
奮闘しておられる方々に、
こんなわたしの体験が、
少しでもご参考になったことがあれば、
とても、うれしく思います。

(藤井恵さんによる
「おかあさん、ちゃんとごはん食べてる?」は
今回でひとまずおしまいです。
お読みくださったみなさん、
本当にありがとうございました。
よろしければ、ぜひ感想のメールを お送りください。
藤井さんにお届けいたします)

(藤井恵さんによる
「おかあさん、ちゃんとごはん食べてる?」は
今回でひとまずおしまいです。
お読みくださったみなさん、
本当にありがとうございました。
よろしければ、ぜひ感想のメールを お送りください。
藤井さんにお届けいたします)

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