カラダの使い方に関して、
「こうじゃなきゃだめなんじゃないのかな」
と思っていたことが、
実はまったく違うことだった、という経験を
何度も繰り返してきたという、TK。
「何も気にしないで、自分の好きなようにやれば
 それが実際、自分の一番やりやすい
 動きなんじゃないのか?」
というところに、今、辿り着いているのだそうです。
そんなTKが、沼澤尚さんのライブを見て、
「おんなじだ!」と確信したところから、
この対談が、はじまりました。
いったい、なにを確信したんだろう?!
全8回で、おおくりします。
   
       
   
高阪 先日ライブを観させていただいて、
すごく面白かったです。
自分なりの目線で沼澤さんのその動きを見て、
「ああ、だからなるほどこういうことか!」って。
沼澤 ぼく、自分のカラダのこと、
ちゃんと分かってないんですよ(笑)。
高阪 沼澤さんの動きって、
「自分自身では気付いてないんだけれども、
 長いことずっとやってるうちに
 自然とそういうふうになっている」
というふうに見えました。
自然とやりやすい形、っていうのを持たないと、
2時間ドラムを叩きつづけることは
できないはずだと思ってるんですよ。
おそらく意識してやられてるわけじゃない、
ですよね? 自然と‥‥
沼澤 カラダの一部だけに負担がかからないようにする
ドラムの練習というのがあって、
得意な先生にずっと習ってたことがあります。
でも、演奏してる最中には
「よしこうやって動かして‥‥」とかって
考えている余裕はないんですよね。
でも無意識にできるようになるためには、
練習しないといけない。
高阪 はい、そうですね。
それを経て自然にできるようになったんですね。
“井上陽水奥田民生”さんのライブを
テレビで観たときに、
「ありがとう」という曲で
ドラムを叩く沼澤さん左手の脇が、
自然にあいているのを見て、そう思いました。
で、これはもう自分の造語なんですが、
「西の動き」と「東の動き」
っていうのがあるんですよ。
沼澤 はい、はい。
高阪 手でいうと、
西っていうのが、
てのひらを上にして出す動き。
東っていうのが、
手の甲を上にして出す動きです。
ドラムは、スティックを両手に持ちますよね。
で、片方を東にしようとすると
片方が西になるんです。
▲右手が「東」の状態、左手が「西」の状態です。
沼澤 ああ、そうですね!
高阪 でね、最初、沼澤さんは、
その動きを完全に使い分けられてる、
と思ってたんですけれど、どうも違うらしい。
沼澤さんのドラムは
完全には、手を返さないんです。
西と東の間ぐらいの状態。
意識するのは、西、東、なんですが、
間を取りながら演奏している。
沼澤 うわー、そう?!
高阪 そこが面白いなって自分は思ったんです。
たとえば、自分らでいうと、
ボクシングで打ち抜くときは
完全に西と東に分けるんです。
沼澤 うん、中間がないということですね。
高阪 いわゆる捨てパンチではない、
打ち切るときは完全に東にしちゃうんです。
沼澤 なるほど、その打ち切ったときというのは、
それによるデメリットって何なんですか?
捨てパンチは、
カウンターへ行くためのものですよね。
高阪 そうです。
打ち切るときは、それで倒すつもりのときですね。
沼澤 そこまでやると何かが犠牲になりますよね?
高阪 そうですね。打ち切ってしまうと、
回避が遅くなります。
倒すつもりで行くわけなので、
うまくいけばいいけれど、
うまくいかなかったときに、
次の体勢に戻すのが遅くなります。
それがデメリットですね。
沼澤 それ、一緒ですよ、ドラムと。
次の動作に移るためには、
叩ききってしまうと、遅くなる。
高阪 はい、そうなんですよね。
最後の最後に決める一音だったら‥‥
沼澤 破壊力をもった一打でいい。
高阪 ドラムも打撃も同じですね(笑)。
フィニッシュブローで、ドン!
沼澤 たしかにそうです。
すごい、それ!
高阪 それが沼澤さんのライブを見てて、
「あ、同じや!」って思ったところです。
最初に思ったのと違ったのは、
全部いちいち西と東を
入れ替えていると思ってたことです。
沼澤 わりとそのどっちでもみたいなところが、
多いんですよね、やっぱり。
高阪 それがすごく見てて新鮮でした。
カラダの使い方っていう目線で
見させてもらったときに、
東にも行ってない、
西にも行ってないんだけども、
戻るのも早いんだと。
沼澤 はい、はい、戻りたいから
それぐらいにしておいてる、みたいな感じです。
しかし自分の動きをそんなふうに
分析して見たことなかったですよ。
見てみよう、今度。
ほぼ日 そんなのを分解して見てる人も
高阪さんぐらいしかいないですよね。
僕らは、そのカラダの動きは、
「沼澤さん、ノリノリだなあ!」
というふうに、表現として見ています。
「あの人、体がすごい揺れるんだよね」とか。
高阪 そう、結局、極端に言うと
走っているときのような動きになりますよね、
沼澤さんのドラムは。
沼澤 ‥‥高阪さん、
ドラムを見る目がすごいんですけれど、
もしかして‥‥
高阪 (笑)はい、自分はドラムを
昔、やってたんですよ。
中学生の時にバンドを組んでて。
沼澤 やってたんですか?!
柔道をやりつつ?
高阪 中学校の部活動って、三年生の夏で一回、
引退になるじゃないですか。
その夏に、友達とかがバンドやろうぜと
言い出したんです。
ドラムなんていうのは家にあるやつなんて
ほとんどなかったんですけれど。
沼澤 僕もなかったです。
高阪 うちの家にはあったんですよ、なぜか。
沼澤 なんでですか?
高阪 一番上の兄貴が、ツイストのドラムの
ふとがね金太さんのファンで
ドラムを買ったんです。
それで自分がやることになって。
結局、柔道で高校に行ったので、
ドラムは宙ぶらりんになったんですけれど。
  (つづきます)

沼澤さんが、カラダの軸が取れていることが
とてもよくわかるフォームです。
背筋を伸ばして肩を落とし、
足は股関節から動かしているのがわかります。

Special Thanks to THEATRE BROOK

   
    2007-07-02-MON    
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第1回
ぼく、自分のカラダのこと、
ちゃんと分かってないんです。
第2回
カラダを変えたら、音が変わっていった。
第3回
カラダの軸をコントロールするのは
股関節なんです。
第4回
ぼくはすごく「できなかった」んです。
だからたくさん練習しなきゃいけなかった。
第5回
イメージして、動けるぞという
気持ちを持っていることが大事。
第6回
カラダが、音にそのまま出るんです。
第7回
カラダを使うことって、
ほんとに終わりがないんです。
最終回
自分の経験が邪魔になるときがある。
そんなときはピュアな意見を聞くんです。
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