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糸井 |
塚越さんとはいつもメシがてらふたりで話してるから、
みんなの前で、となると
ちょっとちがう気分だね。
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塚越 |
でも、糸井さんとは
このところずっと仕事してなかったから、
ようやく「ほぼ日」と
何かできることになったのがうれしいんです。
ぼくらウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンも、
ここにきてすごい勢いで
マーケティングのしかたやいろんなチームとの組み方が
あたらしくなってきています。
まさにいま「ほぼ日」や「東北ツリーハウス観光協会」と
いっしょにやってることは、
ぼくらのスポンサードの新しい形です。
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糸井 |
スポンサードというのはつまり、
ツリーハウス1号のことですね。
(東北の「100のツリーハウス」の「1号」は
『モンスターズ・インク』MovieNEXの協力で
建設されました)
マーケティングとか経営とか、
そういうことを専門に研究している人たちに比べると
ぼくはずいぶん不勉強なんだけども、
実践としてやってきたことを見ると、
あんがいそうでもないんじゃないかな、という気がする。
世の中は少し前から
「ソリューション」という言葉を、
ものすごく言うようになってきたけど。
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塚越 |
ソリューション。
うん、よく聞くね。
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糸井 |
広告代理店の人たちも、
「社会に向けて何かを伝えることが
代理店の役だと思っているかもしれないけど
そうじゃない、
うちは解決全部が仕事です」
という言い方をしたりします。
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塚越 |
ぼくは、それは、ピンときますよ。
なぜピンとくるのかというと、
糸井さんにはこれまでいつも、
ソリューションを考えてもらってたから。
悩みがたくさんある状態で糸井さんに会って、
メシを食いながら話してると、
糸井さんはぼくの悩みの中から
「ソリューション」を出してくれるんです。
それ、ぼくはいつも感心するのね。
何に感心するかというとね。
たとえば、悩みが5つあるとする。
そうすると、ぼくらはたいてい
5つそれぞれのソリューションについて考えます。
だけど、糸井さんのソリューションは
1個のアイデアで、この5つの問題を解決します。
その「1個」というところが、すごいです。
でも、そのために、
すごく苦労していただいてる。
例えば
「前回のメシのときには考えつかなかったけど
そのあと風呂に入ってるときに
出てきたアイデアがあって」
とか言ってくれます。
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糸井 |
ぼくは昔、そもそも広告を作る人間として
塚越さんと知り合いました。
アウトプットでお金をいただいてるのは
ほんとうはコピーライティングだったはずなんだけど、
実際にビジネスの責任者である塚越さんと直に話をしてたから、
お金をもらっても、コピーだけだと
無責任とは言わないまでも、実感がないと思ってました。
事業を興したり経営している人が
いったい何を考えてるか、
そしてぼくはどういう手伝いができるかを
どんどん考えるようになりました。
そうなると、しぜんに
会う回数が多くなっていくわけですが、
それはつまり、仕事じゃなくて会う、
ということになります。
いまみたいに、ただ会って
メシを食ってるように見える。
「このコピーで、こういう広告を打てばうまくいきます」
そんなふうに取引きしても、
その会社の何かが解決するように思えなかったんです。
総合的に、自分がそこの会社の人になったように
考えていたら、それがすごくおもしろかった。
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塚越 |
あの、ディズニーDVDプレーヤーなんか
最たるものでしたね。
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糸井 |
そうそう、あのとき(笑)。
塚越さんの会社でDVDソフトを
これから売っていこうというときに、
そんな品目もないのに、
「DVDプレーヤーをつくりましょう」
ということになって、つくるにあたって
OEM(委託製造)でつくってもらいましょうといって
そのメーカーに塚越さんとぼくが。
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塚越 |
営業しにいったんだ(笑)。
コピーライターなのに、なぜ
ぼくとふたりで営業を。
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糸井 |
意味がわからない。
しかも雨の中、ふたりでね。
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塚越 |
そう。傘を持って。
向こうの社長は大喜びですよ、
「糸井さんとディズニーさんが来たのよ」
つって、工場にすぐ電話してた。
あのときって、まだ、VHS主流の時代ですよ。
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糸井 |
そうですよね。
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塚越 |
DVDは出はじめてたけど、
いわゆる「オタク」とか
オーディオビジュアル系にとがった大人たちが
買ってただけでした。
そんな状況で、ぼくらは
ファミリー、子ども向けのコンテンツを
提供していくことになりました。
そんな人たちはまずDVDなんて買わない。
ぼくらもDVDってよく知らない。
これから映画ソフトの供給方法が
どこへ向かうかわからない。
「糸井さん、どうしよう」と相談しました。
これらの、いくつかの悩みをそのときも
糸井さんはひとつのアイデアで返してきました。
「ディズニーのDVDが出るよ、という宣伝じゃなく、
おおもとにあるDVDプレイヤーが、
マニアしか使っていないものなんだったら、
ふつうの人使いやすいものをつくっちゃいましょう。
それが、いちばん消費者にわかってるもらえる話だし、
DVDにつながる道のインフラになって
宣伝にも使える」
糸井さんはそういうソリューションを
つくってくれたんですよ。
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糸井 |
DVDプレーヤーというものが、
まずはすごく難しくとらえられていました。
だいたい何の頭文字か、いまだに知らないです。
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塚越 |
デジタル・ビデオ・ディスクじゃないのかな。
‥‥Digital Versatile Disc?
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糸井 |
なんだろそれ。
‥‥というくらい
ややこしいスタートだったということだね。 |
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(つづきます) |
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2014-02-19-WED |