田中×糸井対談
担当・ふなわ
第2回 2人だけの秘密の話
- 糸井
-
あの、この客席に向かって言わないとしゃべりにくいんです。
つまり、ご本人のお手柄じみたことを言うんで。
何かって言うと、この方がおられた、大阪の関西電通?
- 田中
-
はい、電通関西支社。
- 糸井
-
電通関西支社の、この方がおられた部署は、なんていうんだろうなぁ、
よく言えば、梁山泊みたいな所なんです。
- 田中
-
もうはぐれものの集りが、
堀井さん(堀井博次)っていう親玉が40年ほど前に現れて、
そこで、東京の秋山晶さんとか、それこそ土屋耕一さんとかが
作っているカッコいい広告に対して、
とにかくカウンターパンチを食らわせようと、
京都や大阪のこの関西のノリで。
で、どんどん人が集まっていって、石井達矢さんとか、
その後電通の専務になった田井中さん(:田井中邦彦)とか、
おかしな人がいっぱい集まったんですけど。
なぜかそこに、糸井さんが(笑)、つながって、
その堀井さんが、「糸井さん、一緒に仕事をしよう」
っていうことで、30年くらい前につながって。
で、久しぶりの再会がそのお花見だったんですよね。
- 糸井
-
飲む所みたいな所では会ってるんですけど、
なんか電通の関西のチームにセットで会うのは、
ぼくは生まれて初めてで。
- 田中
-
あの大集団に、30何人の。
- 糸井
-
大集団に、つまり圧の強い人たちが集まっているわけで(笑)。
で、そこにお花見だっていうから、
もう酒があるのはもうわかっているわけで。
- 田中
-
はいはい。
- 糸井
-
そこで、若手として存在している田中さんの案内で、
そのお花見に行くっていう日があったんですよ。
「あ、俺、行く行く」って言って。
京都の駅に降りて、で、待ち合わせをするんです、田中さんと。
で、その時に田中さんと僕は初対面なんですね。
- 田中
-
はい。
- 糸井
-
で、ツイッターとツイッターのメッセージで、
どこでどう待ち合わせするかとか交換して。
「やぁやぁやぁ、どうもどうも」って言って会ったわけですね。
そうしたら、その時も紙袋下げてるわけです(笑)、複数の。
で、1つの紙袋は、大きなつづらみたいになってて、
- 田中
-
(笑)
- 糸井
-
軽くて大きいんです。
で、それは、あの時のそれは、後で渡したのかな、僕に。
- 田中
-
はい。
- 糸井
-
そうですね。「荷物になりますから、糸井さんにお渡しするものなんですけど、つまらないものですが、これはそのまま僕が帰りまで持っています」って。だから、渡さないっていうのにもちょっと知恵を使っているわけです。
もう1つ、重いものを持っているんです。それは、一升瓶なんですね。「あの梁山泊の方々は、とにかく酒さえあれば機嫌がいいので、これは糸井さんからの差し入れだっていうことで、申し訳ないですけど、勝手に用意させていただいたんで、これを申し訳ないんですけど、お渡しする時だけ持っていただけませんか」っていう、何、その歌舞伎のプロンプターみたいな(笑)。この人は何十年営業畑にいたんだろう?と思ったんですけど、営業畑にはいないんですよね。
- 田中
-
まったく行ったことがないんですよ。
- 糸井
-
なんですよね。で、出掛けて行って。
- 田中
-
そのお酒っていうのは、一応大阪のデパートで、
開けると、のしに大きい筆文字で、「糸井」って書いてあるんですよね。
- 糸井
-
もうすでに(笑)。だから、もう、なんていうの。
いいんだけど、騙されてるような気がする(笑)。
- 田中
-
この小賢しさっていうね(笑)。
- 糸井
-
その念の入り方があんまりなんで、もう笑うしかなくて(笑)、
ただ、その梁山泊の連中は人を疑うことにかけても手練れだし、
まぁ、言っちゃったほうがいいのか、言わないほうがいいのか、
その加減もわかんないんです、とにかく。
- 田中
-
はい。
- 糸井
-
で、まぁここは田中泰延に任せておこうと思って。
言われた通りに、僕は芝居ができない人間なんで(笑)。
「これ」って言って渡したら、案の定、湧くんですよ。
- 田中
-
まず、僕たちは、少し遅れて行ったんですよね。
- 糸井
-
はい。
- 田中
-
で、糸井さんをお連れするから、まぁこうね、特別ゲストだから、みんなが座って、飲んでいる所にお連れしたんですよね。僕、事前に、糸井さんに、(小声で)「ここは糸井さんからって言ってくださいね」って言ってるから、糸井さん、すごい小さい声で、「あのぅ、これ、僕が」って、すごい小さい声でおっしゃるんですが(笑)。
なんかもうね、なんか後ろめたそうに出すから。でも、そうしたら、みんなが、「ワーッ!」って、酔っ払いだから、その包みの紙をグシャグシャって取ると、「糸井」って書いてあって。お酒が出てくるから「ワァーッ!」って(笑)。
- 糸井
-
すごいんだよ。
- 田中
-
その喜び方の浅ましさ(笑)。
- 糸井
-
ガソリンを、こうなんていうの、焚火に投入したみたいに。
- 田中
-
ひょっとしたら、糸井コールが起きるんじゃないかくらいの。
「酒あるぞ!」って、全員一斉に注いで、一気に飲んでましたね。
- 糸井
-
そう。で、そのメンバーは馬鹿じゃないんです。
そこがいやらしいところで(笑)、
馬鹿じゃないっていうのと、馬鹿が同一平面に2つ置いてあるんですよね。
- 田中
-
なんでしょうね、あの人たちは。
- 糸井
-
なんでしょう?
- 田中
-
堀井さんもひどかったんですよ、あの日。
「あれぇ?田中、お前、うちの20何年いて、
何もせぇへんやつかと思ったけど、糸井を連れて来たな」って。
ひどいですよね(笑)。
- 糸井
-
田中泰延っていう人がこのチームの中でどういう存在なのかが
まったくわからないんですよ。
- 田中
-
なんでしょうね。とりあえず、呼び方は「ヒロ君」なんですよ。
- 糸井
-
ヒロ君なんですよね。
- 田中
-
ヒロ君。
- 糸井
-
つまり、27歳くらいの呼ばれ方ですよね。
- 田中
-
もうずっと、入って以来ヒロ君なんですよね。だから、ひどいこともあって、大きい自動車会社のすごい社長とか重役とか、バーッと20何人くらい並ぶプレゼンの時にも、プレゼンに行って、「では、えぇ、具体的なCMの企画案については、ヒロ君のほうから」。
- 一同
-
(笑)
- 田中
-
向こうはザワザワって、「ヒロ君って誰だ?」。
社長が秘書に、「ヒロ君って誰だ?」(笑)。
- 一同
-
(笑)
- 田中
-
「いやいや、すいません、ヒロ君と紹介されましたが、田中でございます」。
で、プレゼンをするという。
- 糸井
-
そこで育った僕ですが、嫌じゃなかったんですよね。
- 田中
-
いや、もうそれは居心地よすぎて。
- 糸井
-
居心地いいね。20何年?
- 田中
-
4年、24年。
- 糸井
-
相当長いですよね。
- 田中
-
はい。