もくじ
第1回「手土産研究家」の田中さん 2017-03-28-Tue
第2回2人だけの秘密の話 2017-03-28-Tue
第3回なにかを書く田中さんを知って 2017-03-28-Tue
第4回誰に向かって書いているのか? 2017-03-28-Tue
第5回これいいな、を伝えたい 2017-03-28-Tue
第6回「プロ」と「アマチュア」 2017-03-28-Tue
第7回アマチュアである、ということ 2017-03-28-Tue
第8回ブルーハーツを聞いて 2017-03-28-Tue
第9回どうしてもやりたくない 2017-03-28-Tue
第10回&ジ・アザーズ 2017-03-28-Tue
第11回健さんと永ちゃん 2017-03-28-Tue
第12回いくつかの見本について 2017-03-28-Tue

ひとつのことを、こつこつ続ける人が好きです。

田中×糸井対談

田中×糸井対談

担当・ふなわ

第8回 ブルーハーツを聞いて

糸井
アマチュアである人のほうが、プロだと、「次もあるから、それやっちゃだめだよ」っていうことを考えたり、「そこで120パーセント出したら、そういうイメージが付いちゃうから、もうだめだよ」みたいなことをへっちゃらなんですよね、アマチュアって。で、それは居心地両方よくないはずなんだけど、どこかで自分がこう演技したくないっていうのが、だから、泰延さんに渡された日本酒っていうのも、ちょっとあれは、ものすごくむずかしいんですよ、僕には。
田中
なるほど。
糸井
で、たぶん、カミさんとかはそれをやってる人なんで、僕はそこでもっとすごいことしてるなぁと思うから、自分がアマチュアでいられるんでしょうね。プロって、やっぱり、「プロって弱みなんですよ」っていうのは肯定的にも言えるし、否定的にも言えるし、ただ、「何でもない人として生まれて死んだ」っていうのが人間として一番尊いことかどうかっていう価値観は、僕の中にはどんどんこう強固になっていきますね。たぶん、今泰延さんは、その、なんていうんだろう、生きていく手段として問われていることがものすごく今山ほどあって、
田中
はい。
糸井
みんな興味あるのは、そこの機能としての泰延さんが社会に機能するかどうかっていうことばっかりを問いかけている時代で、「何やって食っていくんですか?」、「何やって自分の気持ちを維持するんですか?」、面倒くさい時期ですよね。
田中
そうですね。今まで担保されてたものがなくなったので、みんなが質問するし、僕もまぁ時々、どうやって生きていこう?ってこと考えるし、その、僕からの質問なんですけれども、糸井さんが、まぁ40代の時に、広告の仕事を一段落つけようと思った時に、やっぱりそういうことに直面されたと?
糸井
まぁまさしくそうです。あのぅ、言えないようなことも含めて、もっと冒険ですよ。なんていうの、非常にプライベートと一緒ですから。
田中
はい。
糸井
だから、泰延さんのケースは、やっぱり、うん、大組織が一旦あったっていう、それはあるんですけど、退職金のない世界ですからね。
田中
そうですよね。
糸井
いや、大冒険です(笑)、大冒険です。で、平気だったんですよ。で、その理由の1つは、さっきの、俺よりアマチュアなカミさんがいたことはでかいんじゃないかな。
田中
うーん‥‥。
糸井
あのぅ、「こういうことになるけど、いい?」とかって、俺は聞いた覚えもないし、後で、「あれは聞くべきだったかな」みたいなことを聞いたら、「いや、別に」みたいな。だから、たぶん、自分がそれは働くつもりではいたんじゃないですかね。
田中
なるほど。
糸井
それは、相当でかいんじゃないかな。でも、「働かない」って言っても、案外、俺平気だったような気がする。
田中
あぁ、なるほど。
糸井
なんでしょうね、それね。
田中
いや、今日、実はね、後でサイン貰おうと思って、会社入る時に買った、マドラ出版の、『糸井重里全仕事』って。
糸井
あぁ、はいはい。
田中
コピーの、あの、広告の仕事。でも、今から糸井重里さんってことを考えると、全仕事でもなんでもなくて、何パーセントなんですよね、そのキャリアの中で。でも、広告の仕事は、まぁかなり一旦そこで一区切りついてるから、「全仕事」って付けられちゃうんですけど、タイトル。でも、それを一区切りつけた、違うことに踏み出そうと思った時の、これこそ、僕は今日本当にね、お伺いしようと思って。
糸井
あぁ。
田中
もう相当それは、で、糸井さんと初めて京都でお会いした時に、タクシーの中で、僕は最初に聞いたことがそれだったんですよね。
糸井
あぁ。
田中
「いや、ほぼ日という組織をつくられて、その会社を回して、大きくしていって、その中で好きなものを毎日書くっていう、この状態にすごい興味があります」って言ったら、糸井さんが、「そこですか」っておっしゃったんですよ。それが忘れられなくて。
糸井
辞めると思ってないから。
田中
あぁ。
糸井
電通の人だと思ってるから。
田中
そうですよね。
糸井
それは、「そこですか」って思いますよ。だから、「あれ?この人、電通の人なのに、そんなこと興味あるのか」っていうのは、「えぇーっ」と思ったですね。
田中
その時、僕も辞めるとはまったく思ってなくて、それこそ。
糸井
4月ですよね。
田中
はい。
糸井
去年。
田中
辞めようと決めたのは、
糸井
(笑)
田中
この間みんなで、燃え殻さんとか永田さんとか古賀さんと雑談したじゃないですか。
糸井
うん。
田中
あれ、9月?
糸井
9月。
田中
あの時点でまったく辞めると思ってなかったですから。
――
へぇ。
糸井
素晴らしいね。あぁ。
田中
辞めようと思ったのが、11月の末ですね。
糸井
(笑)
田中
で、辞めたのが12月31なんで、1ヶ月しかなかったです。
糸井
素晴らしい。
永田
11月末に何かあったんですか?
田中
いや、なんか、これが本当にね、
糸井
(笑)
田中
この間も、ちょっと昨日たまたま書いたんですけど、理由になってないような理由なんですけど、やっぱり、
糸井
ブルーハーツ?
田中
ブルーハーツですよ。だから、なんか、だから、まだこんなね、50手前にオッサンになっても、おっしゃったように中身は20うん歳のつもりだから、それを聞いた時のことがこう、思い出して、「あ、これは、なんかもう、このように生きなくちゃいけないな」って。かと言って、何か伝えたいこととか、「熱い俺のメッセージを聞け」とかないんですよ。相変わらず、なんか見て聞いて、「これはね」ってしゃべるだけの人なんですけど、でも、なんか、「ここは出なくちゃいけないな」ってなったんですよね。
第9回 どうしてもやりたくない