ぼく、全然関係ない話していいですか? | |||
うん。 |
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ぼくの伯母、 大正生まれのおばさんがいてね、 20歳で会社に入って、 いきなり満州に勤めに行くんですよ。 で、向こうで支店長だった男の人と 恋愛関係になって、 日本に帰ったら 結婚するつもりだったんだけど、 実は日本に奥さんと子供がいたんですよ。 | |||
おー。 | |||
あー。 | |||
それを知って、 ま、帰って来てからどうするかって考えて、 長女だったんだけど、 妹がうちの母なんですけど、 妹、弟たちに、これこれこういう訳で、 こういう人と恋仲になったから、 このままいくんでよろしくっていう 宣言をしたんですって。 で、まあ、その後、仕事しながら、 当然結婚できないと思っていたんだけど、 相手の奥さんが亡くなって 子供たちが巣立った後に、 おじさんが倒れちゃったんですよ。 あ、ぼくは正確には親戚じゃないのに 「おじさん」って呼んでたんだけど。 で、そしたら息子たちが、 彼女の存在を知ってるものだから、 なんていうのかな、 おめかけさんというものが 「いた」時代の人たちだから、 後添えにね、 後妻さんになってくれないかって お願いに来たんだって。 でも、伯母は、それを断るの。 | |||
ああ。 | |||
そーんなことのために、 私はずっとあの人と 恋人でいたわけじゃないと。 そこはちょっとね、 プライドが許さないんだよねー、 なんて言って、 ただ、おじさん1人暮らしだからって、 お手伝いさんで入ることになったわけ。 そうしたらすぐおじさん、倒れちゃって、 病院と行ったり来たりして、 酸素ボンベ、 横にいつもあるような状態でいて、 結局、看取ったんだよね。 おじさんは最期の最期まで 「籍入れてやる」とか言ってて。 大学4年だったぼくの心配もして 就職はどうするんだー、 どこでも入れてやるー、 大企業に行けー、 どこがいいんだー、とか言ってんだよね。 大企業なんてやってけるわけないし、 入りたいわけでもないんだけど、 そんな世話好きなおじさんで、 で、‥‥死んだんだよ。 その後ね、しばらくして、 1人暮らししてるおばちゃんのとこに 遊びに行ったときに聞いてみたんだ。 「いつ、すっきりした?」って。 一緒に住めたときに 自分のものになったと思った? って。 そしたら 「いやー、あんときはまだだったね。 おじさんが死んだときかなあ」って。 そのとき、やっと楽になったって。 | |||
へえ。 | |||
うーん。 | |||
それを、明るく言うんだよ。 もともとすごい明るい人で、 美人で、頭もよくてね、 お裁縫も料理も上手なのに なんで結婚しないんですか? って訊かれると、 まさか支店長と できてるって言えないから、 「私には許嫁がいたんだけど 出征したまま帰って来ないんです。 死んだという便りは来たけれども、 私は信じていないから ずっと待っているの」 っていう、嘘の話を作って話してたら だんだん本気になっちゃって、 もう、おじさんが死んだ後に 終戦記念日とかに、 「聞け、わだつみの声」とか テレビでやるじゃないですか。 あれ、見るとね、 「あの人はどうしてるかしら」なんて その気になって泣いちゃうんだって。 嘘も真もなくなっちゃってて、 もう、ないまぜでしょう? 笑ったり泣いたりが、ないまぜなんだ。 いまは伯母はアルツハイマーで、 施設に入ってて 「きのうまで三つ編みにしてたのよ」って 女学生みたいな紅い頬紅つけて、 ちょっとはみ出た口紅をさして、 すごく楽しそうなんだよ。 それ見て、なんていうんだろう、 それでいいじゃないって思って。 ‥‥そのくらい、ふつうの人の一生にも、 ドラマがあるんだって思った。 世の中にはほんとにいっぱい、 幸も不幸も他人には 量れない出来事があるって。 | |||
いや、ほんとそうですよね。 | |||
ちょっとミユキイズムですね。 | |||
ミユキイズム。 客観的に哀しいことであっても 主観的にはそうでもなかったり、 また、逆だったりね。 | |||
みゆきさんの歌詞読んでると、 みんな、普通に生きてるようでいて、 じつはあんまり普通っていうのって ないのかなって、ね、 平凡と言われてるものって あまりないのかなあって。 | |||
ないかもね。 みゆきさんはもしかしたら 言いたいかもしれないことは そういうことだよね。 「地上の星」だもんね。 | |||
確かになあ、昔から聴いてたから、 そういう何かネガティブな感情を 否定しなくていいとか、 そういうのは何かこう、 教えてもらった気がしますよね。 「うらみ・ます」なんて 歌っちゃうんですもんね。 | |||
ほんと、扱い難しいものをね、 見事にね、やってますよね。 | |||
だって出す前にやっぱり、 ヒットしたいとか何かしらありますよね、 制作サイドには。 そこで「うらみ・ます」って言って、 それでいいんだよって言える、ね。 | |||
ね。 | |||
これを出せるということが すごいと思う。 | |||
自分で決済して来たのかなあ。 | |||
今はそうでしょうけど、 「うらみ・ます」の頃とかは、 まだ若いから、 レコード会社も偉いですよね。 | |||
もう、でも「うらみ・ます」の頃は 1980年代になっていて、 すでに70年代に、 研ナオコさんとか桜田淳子さん、 加藤登紀子さんやちあきなおみさんたちに 提供した曲を たくさんヒットさせていたんだよね。 「あばよ」とか、「しあわせ芝居」 「この空を飛べたら」 「追いかけてヨコハマ」 とかで、世の中にはもうちゃんと 認められてる人になってたわけだから。 | |||
「かもめはかもめ」はその頃ですか? | |||
「かもめはかもめ」は、 みゆきさんが歌い直したのは もうちょっとあとだけど‥‥ | |||
(調べる)あ、でも、 研ナオコさんが歌ったのは1978年ですね。 この曲、ぼく、小学生くらいのときで、 すごく覚えているんだけど、 研ナオコさんが半年くらい ある事件で、芸能活動を休止したんですよ。 研ナオコさんというのは当時 「カックラキン大放送」なんかで コメディエンヌとしても大人気の歌手で、 その人がいなくなってしまうというのは 子供たちにも大ショックなことだったわけ。 で、復帰する、というときに 歌ったのがみゆきさん作の 「かもめはかもめ」で、 これがもうとんでもなくいい曲で、 子供心に、 「この人はこの曲で救われるんだ」って、 ‥‥言葉にして思ってはなかったけど、 そんなふうに感じたんだよ。 1978年って、 みゆきさん25歳かそこらなんだよね。 | |||
すごい。 | |||
失恋の歌を歌うっていうイメージが、 その頃、ありましたよね。 | |||
ありました。 | |||
ありましたね。 | |||
そのままずーっと、 誤解しっ放しの人も いるかもしれないですよね。 私が大学生で人に 奨められて聴いたんですが、 聴く前は漠然と 「失恋の歌」だと思ってました、 暗いだけの曲なんじゃないかしらと。 | |||
「うらみ・ます」もそうだし、 「わかれうた」の ♪途に倒れて誰かの名を 呼び続けたことありますか♪ という印象ですよね。 あとマリコの部屋に電話をかけている人。 | |||
(笑)。 | |||
一方で、 わたしは「時代」が好きだったんです。 と同時に、ラジオのみゆきさんの明るさ。 そこにやっぱり、 「そりゃそうだよね」って。 このまんまの、歌詞のまんまの人の わけないよねって気づきました。 | |||
それこそこの頃って、山崎ハコさんとか。 | |||
森田童子さんとか。 | |||
そういうものはそれで 需要があった時代なんだけど、 みゆきさんはやっぱその中でも、 やっぱ何か違うものがありましたね。 | |||
違いますよね。みゆきさんは 暗いネガティブな感情だけじゃなくて、 一気にこう、ぐわっと世界を 果てから見下ろすみたいな、 それも上から見下ろすんじゃなくて、 全体を俯瞰するみたいな。 | |||
照らすみたいな。 | |||
うん、そういうのと 両方あったんですね。 | |||
あったんですね。 必ずぽーっと灯りがあったりとか。 アルバム全体で聴くと。 | |||
「時代」はまた全然違いますもんね。 照らす方ですよね。世の中を。 | |||
だからその両方があるから 違うんだと思うんだよなあ。 | |||
うん、うん、うん。 |
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あの‥‥、みゆきさん、きれいでしたね。 誰も言ってないんで、 取ってつけたような言い方ですけど。 | |||
うん、うん。 |
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ぱっと出て来たとき、 うわっ、きれい、って思いました。 | |||
きれいですよね。 | |||
うん、赤いドレスでね。 | |||
ほんとに。ほんとにきれいですよ。 スタイルもいいし。 | |||
うん。 | |||
化粧品のコマーシャルに 出てるくらいだもの。 | |||
聖子ちゃんとねえ。 | |||
DVDの感激団から始まって、 どうしてもこう、オフ会のような 感じになりますよね。やっぱりね。 | |||
そこまで言うなら観てみようっていう人が 1人でもいてくれたらすごく嬉しいですね。 このDVDは レンタルがないと思うんですが。 ‥‥あっ! ひとつ言いわすれてた。 | |||
なんですか。 | |||
エンディングロールがよかったと思って。 ものすごい、ゆっくりでしょ。 | |||
うん、そうですね。 | |||
あれはスタッフひとりひとりを とっても大事にしてるって表現ですよね。 | |||
そうだ、わたしも、そう思いました。 | |||
そうですよね。長かったですねー。 | |||
あれは、もう、最近のテレビ番組が もう読めないくらい速いでしょう。 それに較べてあのゆっくりさは、 何かメッセージがあるような気がしました。 このDVD、 ライブを追体験するというだけじゃなくて、 ドキュメント部分も含んだ作品として、 1回目は、途中、きゅきゅっとやらずに 観てほしいなあと思いました。 |
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(この下に、「おまけ」のトークもあります。 よかったらどうぞお読みくださいませー) |
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うまく表示できない方は、こちらからどうぞ。 |
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おまけ:みゆきさんカラオケ談義を読む | |||
(おしまい) |
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2008-10-22-TUE | |||