糸井 | ぼくらはどうしても 自分たちの興味が優先しちゃうものだから、 とっくに公開されている映画を観て 「おもしろいじゃん、応援しよう」 っていうのが、よくあるんです。 もう、タイミングとしては遅いですよね。 |
西川 | いえ、おかげさまで けっこう長く上映されているようで、 まだ観られる劇場もありますので。 |
糸井 | そうですか。 すみません、トンチンカンで(笑)。 |
西川 | ぜんぜんです、すごくありがたい。 |
糸井 | 遅ればせながら『蛇イチゴ』も観ました。 あれは監督デビュー作ですよね。 |
西川 | そうです、 ありがとうございます。 |
糸井 | で、うーん、どうしよう。 どこからいこうかな(笑)。 |
西川 | ちょっと緊張してしまいます、今日は。 |
糸井 | なに言ってるんですか(笑)。 |
西川 | 呼んでいただけるとは思ってなかったので。 |
糸井 | ぼくは、ものすごく呼びたかったんですよ(笑)。 ぜひお会いしたかった。 |
西川 | 本当ですか? |
糸井 | はい。 でも実は、ぼくより先に声を出したのは、 うちの妻のほうなんです。 彼女はもともと『ゆれる』をすごく褒めてたんで、 サンプルのDVDを持って帰ったら 「えー」とか言ってね。 自分の部屋に持って入って、 急に観はじめたんですよ。 しばらくしたら途中で1回出てきて、 「おもしろい(すごく低い声で)」って。 |
西川 | そんな声ではないでしょう(笑)。 |
糸井 | えーとね(笑)、 まあ違うんですけどね、 気分的にはそのくらいの声でした。 「おもしろい(もっと低い声で)」。 |
西川 | 本当ですか(笑)。 |
糸井 | 「ぜんぶ観たらあとで感想きかせて」と言ったら、 「うん」と返事をして 彼女はまた自分の部屋に入ってですね、 やがて最後まで観終わって出てきた。 そしたら、 「おもしろかった(さらに低い声で)、 いちばんいいかもしれない」って。 |
西川 | (笑) |
糸井 | 『ゆれる』よりも、好きだったみたいです。 あなたはあんなに『ゆれる』を褒めてたじゃない? ってぼくは思ったんですけど、 『ディア・ドクター』は、もっといいんだと。 『ゆれる』にはなかったことが、 『ディア・ドクター』でぜんぶできてる、と。 まあ、そんなようなことを言ってました。 |
西川 | そうですか。 |
糸井 | で、そのあとぼくも観ました。 いや、その通りでしたね、おもしろかったです。 |
西川 | ありがたいです。 |
糸井 | 両方を観た何人かと話したんですけど、 「私は『ゆれる』のほうが好きだ」 という人が多いんです。 それはわかるんです、そう言う人の気持ちは。 『ディア・ドクター』のほうがいいって言うのは、 ぼくの知っている限りでは、 ぼくとカミさんだけなんですよ。 でも、『ディア・ドクター』のほうがいい と言う人のほうが西川さんを理解している、 とぼくは勝手に思っています。 |
西川 | うーん‥‥それって、 自分でもわからないことなんです。 私の作風はどっちなんだ? って。 その2作は、だいぶ違いますよね。 |
糸井 | だいぶ違いますね。 だいぶ違いますけど‥‥ 遠投が効いているというか……。 うん。 『ディア・ドクター』は ホームランの大きさが違いますね。 すばらしかったですよ。 |
西川 | いや、なんだか‥‥ ありがとうございます。 |
糸井 | DVDで1回観て、 礼儀としてぼくは劇場で観たかったんで、 もう1回、映画館に行きました。 ストーリーの意外性もありますから、 2回観るというのは本当はきついんです。 |
西川 | そうですよね。 私も同じ映画を何回も観ないほうです。 |
糸井 | そうですか。 でもこの映画は、ぜんぜん大丈夫でした。 2回目もちゃんとおもしろかった。 |
西川 | よかった。 |
糸井 | 観客としては同じ映画を繰り返し観なくても、 作る側の西川さんって、 しつこいでしょう? |
西川 | そうですね、 しつこいほうだと思います。 |
糸井 | それ、ぜんぶ当たってますよね。 |
西川 | え? どういうことですか? |
糸井 | しつこくした分だけ、よかったんです。 |
西川 | ああ‥‥ あまり観る人のことを考えてないというか‥‥。 自分自身は1回しか映画を観ないほうなのに、 観る人には何回も観させるような しつこい詰め込み方をしてるな、 というのは最近ちょっと思うんですけれども。 |
糸井 | いいんじゃないでしょうか。 だっておもしろかったんだから。 |
西川 | よかった、ホッとしました(笑)。 |
糸井 | だから、こうして対談を組んでもらって ぼくはほんとうにうれしかったんですけど、 別に、しゃべることもないような‥‥(笑)。 |
西川 | (笑) |
糸井 | 「おもしろかったです」くらいしか言えない。 |
西川 | 十分です(笑)。 |
糸井 | そうなってしまうくらい、 入っているんだと思います、この映画の中に。 |
西川 | そう言っていただけるのが何よりです。 言いたいことは映画で言ってる、 という気持ちはあるので。 |
糸井 | 言ってますよね。 だから、どうしましょうかね‥‥? 褒めるところはいっぱいあるんですけど‥‥ どこをいきましょうかね。 |
西川 | (笑) (つづきます) |
2009-09-01-TUE
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