さて、この連載も終盤です。
あす9/13(火)は白いシャツの全ラインナップを発表、
その翌日9/14(水)は
「ほぼ日」(午前11時から)と
伊勢丹新宿店、日本橋三越本店(ともに午前10時半から)での
販売がスタート(*)しますよ。
※「ほぼ日」で販売するものとは、
一部ラインナップがことなります。
その前に!
これも昨年は「お伝えできていなかったこと」を。
白いシャツの「じょうずな」アイロンのかけかたです。
これ、知りたかったのです。
ぼく(武井)はじぶんで洗濯をしますが、
アイロンは‥‥苦手です。
持ってるんですよ、アイロン台もアイロンも。
でもまあ「パンパン、と広げてハンガーで干せば、
それなりにシャンとするし」と、
まずアイロンがけをすることがありませんでした。
そもそもネクタイをしてパリッとしたシャツを着る、
そういう機会はとても少ないのです。
でも、昨年からこのコンテンツをつくりはじめて、
ネクタイをする・しないにかかわらず、
シャツってアイロンをちゃんとかけて着ると
とっても気持ちがいいんだということを実感し、
よくわからないままに自己流で
少しはかけるようになりました。
‥‥でも、どうもうまくいかないのです。
とくに衿まわりが!
そして、クリーニング屋さんに出しても、
シャツのアイロンがじょうずなところと
なんだか全体にぺったんこになっちゃうところがあって、
そういうちがいってどうしてなんだろ?
とも思っておりました。
そんななか、熊本のHITOYOSHIさんの
シャツ工場の見学に行ったときのこと。
工場長の竹長さんはじめ、
HITOYOSHIの男性社員のみなさんのシャツは、
みごとにアイロンがかかっていて、
とてもきれいでした。
ふと、こう聞きました。
「竹長さん、アイロンって自分でかけますか?」
すると竹長さんは、しごく当たり前のことのように
(冷蔵庫は開けたら閉めますよね? というくらいの
当たり前加減でした)、
「はい、かけますよ。
日曜日の夕方、テレビを見ながら、
1週間分のシャツをかけるんです」
と!!
「ハンガーに、次の1週間で着るシャツを選んで並べて、
順番にアイロンをかけるんです。
月曜日はお客さんがあるからこれ、
火曜日はこれ、水、木、金、土は‥‥、
というふうにイメージしながら。
ですから6枚かければ終わりのはずなんですが、
家族がいつの間にか『これもかけて!』と
持ってきたりするので、
けっこう時間がかかったりもしますけれど、
それは、とても楽しい時間なんです」
か、かっこいい‥‥。
これです、理想のアイロンがけ!
おっと、その前に「洗濯」です。
これは難しいことはありません。
洗濯機を使い、衿や袖の汚れが強ければ
専用洗剤を使って洗えばいい。
(ちなみにぼくは人に教わって、衿・袖は
「ザ・ランドレス」というところの
「ウォッシュアンドステインバー」
というのを使っています)
「洗濯機には、そのまま入れていますか?」
と竹長さん。
あ、ネットに入れたほうがいいってことですよね?
「いえ、シャツを脱いでそのままかなと」
ボタンを締めて入れてます。
そのほうが、形が崩れない気がして。
「とてもいいですね!
では、もうひとつ、
ボタンを留めたシャツを、
袖だけそのままにして裏返します。
そうすると、袖だけ中に入ったまま
シャツのボディが裏返しになりますよね。
その状態で洗濯機に入れてください。
というのも、その後のアイロンがけには、
できるだけしわが少ないほうがいいんですが、
洗濯機だとどうしても袖がねじれてしまい、
そのまま脱水するのでしわが残りやすいんです。
すこしでもそれを防止するのに、
そうすると、いいんですよ」
▲この状態で洗濯機に入れる! 知らなかった‥‥。ちなみにこのシャツは、「しわ加工」のシャツです。いくらなんでも着ただけでこんなにしわにはなりません。例が悪くてすみません。
なるほど! 袖のシワ、たしかに気になってましたが、
こうすればすこしは避けられるんですね。
家でさっそくやってみました。
うちのドラム式洗濯機は、この状態をなぜか
「もとにもどしてしまう」! 魔法か。
ここからさらにネットに入れたほうがいいとわかりました。
「では、アイロンをかけていきましょう。
使うのはどこにでもあるような
アイロン台と、アイロンです。
人によりますが、私は立って作業できる高さの
アイロン台を使っています。
そして、大事なのは、霧吹きです。
できるだけ細かい霧が出るものがいいので、
私はスチームアイロンのスチーム機能は使わず、
使い終わった衣類消臭剤の
スプレーボトルを洗って再利用しています。
もともと空気中に霧を出すための仕様なので、
うんと細かく出るんですよ」
わ! ふたたび、なるほど!
霧吹きやスチームって、
「びちょっ」と出たりするんですよね。
そうだ、思いつきました。竹長さん、霧吹きを使わずに、
「脱水したらすぐにアイロンをかけて、
ハンガーに吊るして乾燥させる」のはどうなんでしょう?
「そのタイミングでアイロンがかけられるのなら、
もちろんそれでもいいですよ」
ということでやってみました。脱水したては、
まんべんなくシャツが湿っているので、
アイロンをかけるとおもしろいようにシワがのびます。
霧吹きの手間が面倒という人にはオススメです。
さて、では、HITOYOSHIの工場長の竹長さんによる
シャツのアイロンのかけかた、
教えていただきましょう。
「これは私がいつもやっているやりかた、
ということで、正解というわけじゃないと思います。
手順はいろいろとご意見があると思いますが、
わが家流ということで参考になったら嬉しいです」
衿からアイロンをかけます。
ここがいちばん難しいんです。
というのも、シャツの襟は、羽と台の形状が違い、
それを縫い合わせてひとつの衿になっています。
くびのカーブに沿うように立体的につくられているので、
一遍にバーンとプレスするのはナンセンス。
そして、首にそったときに伸びてちょうどよくなるように
衿の生地は、表と裏で、
使っている量が微妙にことなります。
‥‥ということは、衿のアイロンのポイントは、こう。
■羽と台は別々に
■引っ張りながら
■首のカーブにあわせて立体的に
まず、乾いた状態からのアイロンを前提に、
たっぷり霧吹きをします。
「せっかく乾かしたのにまた濡らしちゃうの?」
というくらい、たっぷりかけて大丈夫です。
衿を広げて(折らずに)アイロン台に置きます。
衿にとっての「表」をかけたいので、
ネームタグが天をむくように。
裏側から、羽の部分を、
台衿をちょっと引っ張り気味にしながら
衿先から3分の1くらいまでゆっくりとかけます。
力を入れて一気にかけるとシワができるので、
ふわふわっと、端から真ん中に
寄せていくようなイメージです。
これを両衿。
なお、台の部分は、着たときに表に見える部分だけ、
つまり左右の先端だけをかければ大丈夫です。
ここで、着用するときと同じように衿を折ります。
前ヨーク(切り替え布)を基準にして、
台からだいたい5ミリくらいのところで
羽の部分が折れるはずです。
シャツは基本的にそういうふうに設計されています。
この状態で、こんどは真ん中あたりに
アイロンをかけます。
(衿の先は、もうかけません。)
ここでのポイントは、衿の端を持ち上げて
衿を着用時に近い状態にカーブさせながら
ゆっくりアイロンをかけること。
平らにすると、外側のほうが外周が大きいため
シワができがち。
なので、なるべく着るときの立体感を再現しながら、
あわてずゆっくり、かけます。
衿を折った部分は、あまり押さえすぎると、
パキッとなりすぎて恰好わるいので、やわらかく。
すこしだけパキッとさせたい人は、
ここでスプレー糊をしてかけるといいですよ。
ちなみにスプレー糊は、アイロンのときに
衿まわりや袖まわりにつけておくと、
汚れがつきにくいので、
それが気になる人も、いいかもしれません。
これで衿は完成。
余談ですが、衿の芯地に樹脂を使っているタイプのシャツは
汚れが沈着することで目立つのだそうです。
HITOYOSHIのこのシャツはふつうの生地と同じなので
汚れがつきづらいのだとか。
肩は次にむずかしいところ。
やっぱり、縫うのがたいへんな場所は、
アイロンも同じなのですね。
ここをきれいにするには、
アイロン台の端のカーブを上手につかうのがポイントです。
こうすることで肩のヨーク部分がまっすぐに!
「立体のものを、平面でおさえるのですから、
いっぺんにかけられないのは当然ですよね。
だから、少しずつずらして、部分部分でかけていきます」
袖は、縫い目で折り、まずそこをプレス。
着たとき外側に来る部分は、
折り目をつけるかどうかは、好みで判断。
カフスの部分は、内側から少しずつ。
そうすれば、外側からかける必要はありません。
袖のタックは、ぴしっとしたい人は押さえ、
ふんわりさせたい人は、そっとあてるていどにします。
身頃は最後です。
ぴんと伸ばしながら、
前身ごろの左右、裾、
後ろ身ごろの左右、裾、
そしてセンターのタックの部分と、
別々にかけていきます。
ボタンの部分は、留めると隠れますから、
そんなに強くかけなくてもいいのですが、
着たときに見える第一ボタンから第二ボタンまでは
(もっと開けて着る人はさらに下まで)
ちょっと注意しつつかけてください。
以上でアイロンは終了!
「失敗をおそれずに」と竹長さん。
「失敗したら、霧吹きをかけて、やり直しができますから」
そしてボタンを留めます。
畳むならば、袖を縫い目で後ろに折って、
左右の袖を交差させて上に折ります。
(ことばで説明しづらいので画像を見てくださいね。)
そして左右の身頃を適宜折って、
タテは裾をすこし折り込んでから、
全体をふたつに畳みます。
完成!
いやはや、うつくしくできるものですね。
じつはこの取材をしながら、
アイロンがかけたくてかけたくて(ヘン?)
しかたなくなってしまい、
東京にもどってすぐに洗濯をして、
まずは「脱水してすぐかける」のを試してみました。
なーるほーどー! これはいいです。
ちょっと「衿」が難しいといえば難しい。
外周と内周の差で、強くかけると
外側にシワが寄りがちなんですね。
このあたりは熟練していけば大丈夫そうです。
さてさて、いよいよ明日(13日)は
ことしの全ラインナップを詳しく紹介します。
どうぞ、おたのしみに!
ことしも「ほぼ日」と並行して
三越伊勢丹の実店舗での展示販売をおこないます。
昨年は新宿店だけでしたが、ことしは各地をまわりますよ。
どうぞおでかけくださいね。
■9/14(水)~20(火)【新宿】
伊勢丹新宿店 本館4階=ライフスタイル パーク
■9/14(水)~27(火)【日本橋】
日本橋三越本店 新館4階=ライフスタイル
■9/21(水)~27(火)【立川】
伊勢丹立川店 1階=スライス オブ ライフ
■9/21(水)~27(火)【浦和】
伊勢丹浦和店 3階=スライス オブ ライフ
■9/28(水)~10/4(火)【羽田】
ISETAN HANEDA STORE LADIES
■9/28(水)~10/4(火)【名古屋】
ISETAN HAUS 2階=レディ フォア ザ ウィークエンド
■10/5(水)~11(火)【京都】
ジェイアール京都伊勢丹 3階=プロモーションスペース
■10/5(水)~11(火)【仙台】
仙台三越 3階=プロモーションスペース
9/18(日)14時から、伊勢丹新宿店
本館4階=ライフスタイル パークで、
「白いシャツをめぐる旅。」の
トークショーをひらきます。
ゲストは、HITOYOSHIから松岡さん(予定)、
STAMP & DIARYの吉川さん、
そして今回は店舗のみご参加いただいている
Dajaのディレクターの板倉直子さん。
進行は「ほぼ日」武井がつとめます。