2010年初冬──。
糸井重里はモントリオールを訪れました。
目的は、ひとつだけ。
シルク・ドゥ・ソレイユの本社で
ジル・サンクロワに会うのです。
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ジル・サンクロワは、
世界的なエンターテインメント集団、
シルク・ドゥ・ソレイユの創始者のひとり。
いまなお、シルク・ドゥ・ソレイユのショーにおける
クリエイティビリティのカギを握っている人です。
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ジル・サンクロワと糸井重里の関係は特別です。
ふたりは、これまで、3回しか会ってません。
しかも、そのうち1回は劇場で数分会っただけ。
ふたりがこれまでにことばを交わした時間は、
たかだか数時間、というところでしょう。
にもかかわらず、
ふたりの関係は強く、そして深い。
まるで幼なじみのように、
彼らは互いを信頼し合っています。
限られた時間のなかで
ふたりが瞬時に理解し合ったことを、
当の糸井重里も
「なんでだろうなぁ」と不思議がります。
うーん、なんでなんでしょうねぇ?
シルク・ドゥ・ソレイユの本社に入り、
エレベーターに乗って
指定されたフロアまで行くと、
ジルが自分の部屋のドアから身を乗り出すようにして、
「こっち、こっち!」と糸井に呼びかけました。
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ひさしぶり、ジル!
そして、腰掛けるやいなや、
ふたりは、まるで先週会ったばかりの
友だちどうしのように、
自然に、コミュニケーションをはじめました。
(フランス語と英語と日本語を自在に操る
スーパー通訳、角田実さんの力を借りながら)
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それは、すばらしい時間になりました。
シルク・ドゥ・ソレイユの話はもちろん、
新しいショーの話、クラウンの話、
失敗の話、家族の話、キノコの話、
「死」の話、「詩」の話、
そして、友だちの話‥‥。
いまこの瞬間にこの対談が終わっても、
まったく問題がないし、
同席できたことを幸せに思う‥‥という、
うれしい時間がずっと続いているような対談でした。
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端的な例をもうひとつ挙げましょう。
ジル・サンクロワと糸井の対談の場には、
「ほぼ日」の乗組員が3人、同席していました。
それぞれに、糸井重里と誰かの対談に
何度も立ち会った経験を持ちます。
言ってみれば、「すばらしい対談」にだって、
これまでに何度か同席した経験のある3人なのです。
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ところが、ジル・サンクロワと
糸井重里の対談が終わった瞬間、
私たち3人は、これまでに経験したことのない
感情に突き動かされ、思わず、
立ち上がって拍手を送ってしまったんです。
そんなことって、かつてありませんでした。
終わった対談に同席者が
スタンディングオベーションするだなんて‥‥。
ほぼ同い年のふたりが、
モントリオールで交わした深いコミュニケーション。
これからしばらく連載いたしますので、
どうぞ、じっくりとお読みください。
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最初は、糸井重里の
こんなことばからはじまります。
「じつは今日、なんの用事もないんですよ」
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(どうぞ、おたのしみに) |