東京カリ〜番長・水野仁輔さんが選ぶ カレーの思い出。
            「東京カリ〜番長」の調理主任・水野仁輔さんは、
カレーにまつわることならなんでも詳しい人。
お店で食べるカレーのことはもちろん、
そのカレーをつくる人のことも、レシピのことも、
家でつくるカレーのことも、インドのことだって、
ほんとうに詳しくて、惜しみなく教えてくれます。
そんな水野さんが、いま、強く知りたいと思い、
集めているのが「みんなの、カレーの思い出」。
これまでも、ことあるごとにインタビューしたり、
アンケートを集めてきたという水野さん、
そして「東京カリ〜番長」のリーダーといっしょに、
「ほぼ日」でもカレーにまつわるみなさんの思い出を募集、
ご紹介していこう! ということになりました。
カレーの思い出って?
水野仁輔さんプロフィール

#その16
こんにちは。
イギリスへのカレー留学から帰国しました。
ロンドンを中心に
日本のカレーのルーツを探る旅を終えたいま、
僕の頭に残ったのは、日本のカレー文化のすばらしさです。
テクニックはもちろん、バラエティの豊かさは
誰もが驚くレベルです。
カツカレー、カレーうどん、カレーせんべい、
カレーパン‥‥。
どれも世界じゅう探しても見当たらない
日本独自のカレー料理です。
さらに驚くべきことは、
カツカレーをパン生地で包んだカツカレーパン!
なんてものまで存在するということです。
千葉県松戸市にあるパン屋
「ツォップ」の人気メニューです。
僕が「ツォップ」のカレーパンで感動したのは、
お客さんに常に揚げたてを提供できるような
調理場の仕組みを作っていたことでした。
カレーパンは揚げたてが一番うまい。
これは、多くのパン屋が認識していることではありますが、
それを自分の店で実行に移すことは大変困難です。
読者の皆さんの中でも揚げたてのカレーパンを
食べたことのある人は極めて少ないと思います。
衣がサクッとして、
フィリングのカレーがジュワ~ッとくる。
あの感覚は一度味わったらやめられません。
だから「ツォップ」の伊原シェフのことは
大尊敬しています。
もうひとつ、僕は揚げたてのカレーパンを食べられる
パン屋を知ってます。
三軒茶屋の「ブーランジュリ シマ」です。
ここでは、カウンターでカレーパンを注文すると、
1分30秒間、店で待つことになります。
これはパンを揚げている時間なんですね。
当然、料金を払った後に
手にするカレーパンは揚げたてです。
アツアツですぐに口に運ぶと
火傷してしまうんじゃないかというほど。
これは、島シェフが試行錯誤の上にたどり着いた
提供方法だそうです。
島さんがこのスタイルの提供に切り替えたとき、
Facebookを通じてお客さんにお知らせをしました。
「カレーパン、ご注文いただいてから
 揚げるスタイルでの販売を始めました」。
この記事に真っ先に「いいね!」を押してくれたのは、
松戸「ツォップ」の伊原シェフだったそうです。
これは島シェフにとっての
“カレーの思い出”となったことでしょう。

076
Setsu/女性/45歳

大学生の頃、ボート部に入っていて、
春から秋まで辺鄙な場所で
朝晩練習の合宿生活をしていました。
合宿所から大学に通い、
日曜の夜だけ下宿に帰るような毎日の
楽しみといったら食事くらいしかなく、
それも仲間が作る量重視の「めし」だったのですが、
土曜の夜は必ずカレーとフルーツヨーグルトの組合せ、
通称「カレーポンチ」。
ガタイのいい男子たちもカレーポンチの日は
何だか子供のように練習から上がるのがうれしそうでした。
大鍋で豚コマ、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、ルーは
ジャワとバーモントを合わせた簡単なカレーだけど
おいしかったー。
今日は土曜だからカレーにします。

部活の後に食べるカレーはたまらないでしょうね。
問答無用のハードな練習の後だと格別だと思います。
豚こまを使っているあたりが、
量重視のシンプルなカレーという印象をいっそう強めます。
火が通りやすいから、手早く大量に作れるんですよね。
僕は剣道部だったので、ハードな練習ではあったけれども
どちらかというと自分自身と向き合って
苦しみを乗り越えるタイプ。
みんなでガーッと練習して、
みんなでガツガツ食べるカレーのおいしさは、
未体験の世界です。
羨ましい。

077
よう/女性/33歳

ご飯の場所を決めるときに、
いつまでも選択肢が出ないと
一時期この一言でお昼を決めてました。
「ほら、早く決めないとカレーだよ」。
カレーが大好きで、出かける用事、仕事があるときは、
その駅でカレーを食べるというのが、
私の決まりになっているほど。
職場周辺にもカレー屋が数件。
ランチ時など、カレー好きを知っている友人には
平気でいえますが、
さすがに後輩や先輩がいることもあるし、
毎回カレーになると申し訳ないので、
「私はカレーが食べたいけど、ほかのでいいよ」
と、一応他の方々にもお伺いを立てるのですが‥‥。
女子の場合は決まらないことが多いので、
そういう時間が好きでない私は
必ずこの一言で周りの決断を早めようとします。
だって、お昼時間は決まってるんだっ!
まぁ蕎麦屋、うどん屋だとカレーがあるので、
結局はカレーを食べます。

なんという脅し文句!
カレーだよ、カレーにするぞ、それでいいんだな!?
なんだかすごみを感じますね。
ただカレー好きに対してこの文句は一切通じません。
僕なんて、
「迷ったときはカレーにしとくか」のスタンスです。
そば屋にはカレーがある。確かに‥‥。
でも、たまにそば屋やうどん屋で
カレーがない店もあるんです。
パン屋でカレーパンのない店もある。
そんなときはガックリ来てしまいます。


078
ほっしー/女性/42才

カリー番長様、はじめまして。
カレーの思い出って、
手作りじゃなくてもいいのでしょうか。
物心ついたときから、我が家の冷蔵庫には
カレー粉の赤い小さな缶があったので、
家で作ってなかった訳ではないと思うのですが、
私の記憶に残っているのは、木村屋のカレーの缶詰です。
子供のころ、近所のスーパーで買ってくる
木村屋のカレーの缶詰が好きでした。
片手鍋に逆さにあけて、弱火で温めるのは私の担当。
焦がさないようにかきまぜながら、
油が溶けて、なめらかになって、
ぐつぐつしてきたら出来上がり。
チキンのかなり辛口だったはずですが、
小学校低学年の私でも
美味しいと感じました。
そのせいか、今でも辛口のカレーが大好きです。
カレー屋さんで選ぶ基準は、辛さ、ですね。

木村屋のカレー缶って、まだ売ってるのかなぁ。
見たことがないので、
もう販売していないのかもしれませんね。
缶詰を鍋に移して温めて食べるというのは、
僕自身、ほとんど経験がないので、
どんな味わいなのかわかりませんが、
レトルトカレーを温めるようなものでしょうか。
既製品のカレーでもいつも同じ味わいのものを食べていると
思い出深い味になる。これがカレーのいいところです。
ただ、危険なのは、その商品が終売してしまうことですね。
その瞬間から思い出の味が消えてしまう。
だから、やっぱり手作りでカレーを作るという行為は
大事なんだと思います。
いつなんどきでも食べたい味を作ることができる
カレーのレシピ。
冷蔵庫にあった赤い缶のカレー粉はロングセラーで
今もあちこちで売ってますから、
ぜひ、カレー粉を使ったオリジナルカレーを
編み出してください。


079
はと/女性/30代

今から5年くらい前の冬、
私は結婚してから初めて風邪を引きました。
熱を計ったら39度もあり、
起き上がることさえ出来ず会社を休んで
一日中寝込んでいました。
夫の仕事は忙しく、
いつも帰ってくるのが早くて10時なのですが
その日は7時頃に帰って来てくれて
ご飯を作ってくれました。
出来たよ、と呼ばれてなんとか起き上がったのですが
意識は朦朧としていました。
ふらふらしながら食卓に着くと、
そこには満面の笑みの夫と、カレーが待っていました。
一瞬、熱のせいで幻を見てるのかと思ったのですが
何回見てもカレーでした。
なんでカレー!? 
とツッコミを入れる気力はありませんでした。
カレーは大好物なのですがその日は食べる気持ちになれず
結局白いご飯だけ少し食べ、薬を飲んですぐに寝ました。
せっかく作ったのに私が喜ばず、
あまり手をつけなかったため夫は不満そうでした。
治ってからメニューをカレーにした理由を聞いたところ、
私の好物だったからと言いました。
夫は小さい頃から体調が悪くても
食欲が落ちたことはなかったそうで、
体調が悪いときは大好物が食べられる
絶好の機会だったそうです。
それ以来、我が家でカレーは
体調の良いとき限定のメニューとなりました。

そうかぁ、体調が悪い時に鉱物を食べられるというのは、
なかなか想像できないシチュエーションですね。
体調が悪い時は
好物もおいしく感じられないくらいつらいもんです。
たまにカレーはスパイスを使っていて
薬膳効果があり、体にいいとか、
風邪を引いた時には
カレー専門店に行くとか言う人がいますが、
これは、いつも正しいとは言えません。
カレーによってどれくらい体にいいかは違いますから
気を付けましょう。
僕は幼いころから鼻炎気味で、
耳鼻科に定期的に通っていたのですが、
いつも診察の後に病院の売店で買う鳥弁当が大好きでした。
病院に通うのが楽しみだったほど。
別に体調が悪いわけではないので、
好きなものを存分に食べられたんですね。
あのとき、なぜカレー弁当じゃなくて
鳥弁当だったのかは謎ですが。

080
札幌/女性/39歳

カレーの思い出というか、カレーの悩みなんですが‥‥。
うちの父と兄は、三度のメシよりカレーが好き。
1回につき3杯はおかわりをし、
それを朝昼晩×3日間続けても平気な人たちです。
それを向かいの席で(しかもダブルで)
見せられて育った私は、
すっかりカレー嫌いになりました。
だって、ホントに馬鹿みたいに食べるんです。
見てる方が、具合が悪くなります。
でも、母のカレーは美味しいんです。
私だけ食べれないのは、なんかつまんないじゃないですか。
それに、カレーの日は、私のためだけに
別のメニューを作ってくれる母にも申し訳なくなって、
大人になってからは私も一緒にカレーを
食べるようになりました。
ところが、最近は新たな悩みが‥‥。
休日に、平野レミさんの
WADAカレーを作ってみたところ、
大変美味しくできたのですが、
父にとってカレーとはイコール母のカレーのこと。
「こんなのはカレーじゃなーい!」
とまでは言われませんでしたが、
明らかに期待外れの顔でした。
いつものカレーとは別のものだと思って食べてね。
って、言ったんだけどなぁ。
インド風とかタイ風とか、
いろいろ開拓してみたいんだけど‥‥。
無理だろうなぁ(笑)。
カレーは、一人分だけ作って
試してみるってわけにいかないし、
カレーは家族で食べるものだし‥‥。
これはカレーではありません。
と、嘘を吐いて出してみようかな(笑)。
今の私のカレーの悩みでした!。

無理だろうなぁ‥‥。
習慣的に食べてきたカレーの味には、
どんなカレーを持ってしても
打ち勝つことはできないんじゃないかと思います。
もう、長年のすりこみのおいしさなんですよね。
しかも、作ってくれてる人が
家族だったりするから余計に思い入れが強い。
勝てないと思うなぁ。無理だろうなぁ。
でも、お母さんが作る代わりに
娘さんが作るわけですからね。
なんとか気に入ってもらえるといいですよね。
「今から出す料理はカレーじゃありません」。
作戦としては、これしかないかな、と思います。
でも、お父さんに実際に食べてもらって、
「これはカレーじゃないけど、なかなかうまいじゃないか」
なんて言われるのもちょっと悔しいですよね。
健闘を祈ります!
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いろんな思い出をありがとうございました。

最後にひとつ、お知らせがあります。
カレーパンの本を出版しました。


   『うっとりカレーパン』
    スペースシャワーネットワーク
    ¥1,300+税


では、また次回。
みなさんの“カレーの思い出”をお待ちしています!

2014-06-08-SUN

#その1 はじめてこのコンテンツを読むかたへ。 思い出001〜005
#その2 思い出006〜010 #その3 思い出011〜015
#その4 思い出016〜020 #その5 思い出021〜026
#その6 思い出026〜030 #その7 思い出031〜035
#その8 思い出036〜040 #その9 思い出041〜045
#その10 思い出046〜050 #その11 思い出051〜055
#その12 思い出056〜060 #その13 思いで061〜065
#その14 思い出066〜070 #その13 思い出071〜075

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東京カリ〜番長・水野仁輔さんが選ぶ
「カレーの思い出。」、
みなさま、投稿、およせくださいませー。

応募先のメールアドレス:curry@1101.com
件名:投稿『カレーの思い出。』
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(例)シェフ/男性/46歳

水野仁輔さんのコンテンツはこちらもどうぞ。
10分!カレーを作ろう中継。 おせちもいいけど、どんなカレー?

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