2018年1月、
「シェイクスピア講座」で
「ほぼ日の学校」は始動します。

そこに向けて、
いままさに「制作中」の様子や
学校にこめた思いなどを、
学校長・河野通和が
綴っていきます。

ほぼ日の学校長

河野通和(こうの・みちかず)

1953年、岡山市生まれ。編集者。

東京大学文学部ロシア語ロシア文学科卒業。

1978年〜2008年、中央公論社および中央公論新社にて
雑誌『婦人公論』『中央公論』編集長など歴任。

2009年、日本ビジネスプレス特別編集顧問に就任。

2010年〜2017年、新潮社にて『考える人』編集長を務める。

2017年4月に株式会社ほぼ日入社。

ほぼ日の学校長だよりNo.9

「喉を鳴らしてゴクゴク読んだ」

きょうからほぼ日の一大イベント「生活のたのしみ展」が始まります。水木金土日の5日間、59のお店が六本木ヒルズアリーナに出現します。

着る・つける」「食べる」「遊ぶ・飾る・暮らす」……たくさんのお店が名前を連ねた4つ目のグループ、「ほぼ日のお店」と書かれたそのなかに、私が店長を務める「河野書店 ほぼ日の学校長の本屋さん」も堂々オープンしています!

6月から8月にかけて「ほぼ日」で掲載した「19歳の本棚。」に登場した30冊の文庫本を揃えたフェアのほか、これから定期化する予定の「ほぼ日の読書会」の課題図書、拙著などを並べ、さらにはほぼ日乗組員が提供したり、私の書棚からせっせと持ち出した「出会う古本X(エックス)」というスペシャル企画も用意して、皆さんのご来店をお待ちしています。

5日間の期間中、店長はほぼ常駐しています。来年開校する「ほぼ日の学校」のご案内も、こちらで行う予定です。

そもそもこのお店の発想は、「19歳の本棚。」の反響がきっかけになりました。ほぼ日が19周年を迎えた6月6日、19歳の人たち30人をTOBICHIに招き、「19歳になったら。」というミニ講義を私がやりました。(動画7:29:33より)帰りに何か記念の品を、というので、どこの書店でも手に入れやすい文庫本30冊を、ひとりに1冊ずつプレゼントしました。これが、予想以上に好評でした。

そこで、どんな30冊だったかを1日1冊ずつ紹介したのが「19歳の本棚。」です。始めてみると、毎日、感想が寄せられました。

<こんにちは。私は20歳の大学3年生です。特別講義には参加できなかったのですが、このようなコンテンツをつくってくださってありがとうございます。・・・・大学に入ってから、夏休みは本を読むぞ! 今年は映画を観るぞ! と思いながら、いろんな言い訳をしたり、やりたいことを欲張りすぎて、いまだになにもできていません。・・・・まずは、1冊、本を読みきってみようと思います! 今年こそ! そして、できたら順番に読み進めていこうと思います。この夏の楽しい宿題ができました>

<こんにちは。19歳・・・・はとっくに過ぎていますが、このコーナーを楽しみにしています。・・・・私が心揺さぶられた本が出てくるかしら。楽しみです>

<どの本も納得。あー、そうきましたか! という本ばかり。当時ブルブルと感動した覚えのある本ばかりだけれど、正直なところおぼろげにしか覚えていない。実家の本棚にある本もあるけれど、もう一度、手元に置こうかな。感動とパワーをもらえそうだ。そして、14歳の息子が19歳頃になるのを待とうかな>

こうしたメールを、連日、たくさん頂戴しました。なかには「言いまつがい」のコーナーに、こんな投稿もありました。

<ほぼ日の『19歳の本棚。』を楽しみにしています。

どんな本が紹介されるかなと今日も妻が見ていたのですが、
「今日は永ちゃんの『病みあがり』やて」と言ってました。

永ちゃんはそんなに弱ってません>

矢沢永吉『成りあがり』にこういう「言いまつがい」があり得るとは、想定外の出来事でした。

19歳の人、19歳を間近にひかえた人、19歳は遠い思い出だけど、心のなかに19歳の自分はいまも生きているという人・・・・。19歳を起点に、いろいろな人が集いました。

現役で活躍中の著者からは、「こうやって取り上げていただくと、新しく燃料がチャージされたような気がします」というメールももらいました。

今回の「河野書店」で願うのは、文字通り、本との出会いの場の実現です。ここに並ぶ本は、単なる情報を載せた器ではありません。それ以上の、たとえば目の前にいる人物のような生命体のイメージです。

本は文字情報だと思って接するだけでは、とてもつまらない出会いに終わります。もっと五感全体を使って、その本とつながろうとしてみると、いろんなことが分かってきます。

紙に刷られた本の“表情”を汲み取って、たちのぼる本の香りを嗅(か)いで、本と自分の相性に嗅覚(きゅうかく)を働かせてみるのもおもしろいでしょう。あるいは、文字のかたち、組み方、表紙絵、装幀などを味わって、ワインのようにテイスティングするのも楽しいはず。あるいは、本を手に取って、触感を試し、著者や作り手の熱量をはかる。そして著者の真贋(しんがん)を探ってみるのも一興です……。

こうして、真剣に五感を働かせて、本を買うのがお勧めです。お金を出して(少しリスクを取って)、自分の直観力を試してみるのは楽しいものです。

本は買って読むもの、試すもの。小さい頃から、よく聞かされました。ものの良し悪しを自分で見分けるコツを覚え、信頼できる相手かどうか、身体感覚を磨いておくのは、いまの時代だからこそ、なおさら大切ではないかと思います。心の幅が広がれば、それだけ生活をエンジョイできます。

「河野書店」は小さな四畳半のスペースですが、そういう意味では本との真剣勝負が待っているスタジアムだと思って来ていただければ幸いです。

並んでいる本にそんなに当たり外れはないはずですが、それでも好き嫌いや、相性の良し悪しは必ずあります。仮に“失敗”があったとしても、是非またチャレンジしてほしいと思います。「河野書店」は5日間オープンしています。

「19歳の本棚。」に対しては、メールで続報を下さった方もありました。

<最初に紹介していただいた本が、うちの本棚に並び始めました。やはり買い始めたのです。最近になって読んだこともない本も紹介され、ますます揃えたいという気持が、とまらなくなってきた>

こうした感想を、きょう久しぶりに読み返してみて、思わず「えーッ」と声を出しそうになった1通もありました。

<ここ最近で、いちばん好きなコンテンツ。19歳は(おそらく誰にとっても)特別すぎてキュンとする。河野さんの文章を、美味しい水を飲むように、喉を鳴らしてゴクゴク読んだ>

ほぼ日の学校」にどういうキャッチコピーをつけたらいいか。秋口にスタッフで知恵を絞りました。その結果、12月22日の開校プレ・イベントのタイトルが決まりました。

「ごくごくのむ古典」

なんと、6月末にもう、「19歳の本棚。」をゴクゴク読んでくれた人がいた!

「喉を鳴らして」のフレーズを見て、身体の底から湧き水のように、元気が湧いてくるのを感じました。

皆さんとお店でお会いするのが楽しみです。

2017年11月15日

ほぼ日の学校長

「ほぼ日の学校長だより」は、
ほぼ日の学校長・河野通和がお届けするメールマガジンです。

「ほぼ日の学校」のはじまりや、これからの話、夢や想いを
週に1回、お伝えしていきます。
読みつづけていただくと、
耳寄りな情報が入ってくることも。
どうぞ、お楽しみに。

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